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第199回 リフォームの壁〜地球からの贈りもの〜宝石物語

リフォームの壁

By 金子倫子

気象の変化は疑いようもないが、それでも6月はさまざまな種類の紫陽花もここかしこで見られ、雨や薄暗い背景とは対照的に鮮やかだ。

6月の誕生石の代表は、言わずと知れた真珠。

実は昨年の秋、久々に真珠の新入りを迎えた。かなり個性的な新入りは、珊瑚の表面を彷彿させる、ゴツゴツした表面仕上げの金の指輪に10・5ミリの少々黄味を感じるオフホワイトの真珠が鎮座する。それに6つで計0・14カラットの極小ダイヤモンドが真珠の近くに配される。

実を言うとこの指輪、リフォームを前提に購入。総重量11グラム、13万円強で購入したのだが、当時の金相場からして、買った瞬間からすでにに儲けが出ていた状態。大きさからして真珠は最大でも2グラムとすると、ダイヤモンド分は約0・023グラム。そうなると金だけで9グラム程度。目論見としては、真珠はピアスに、地金は指輪にリフォーム。もしくは、金だけ売却したいと考えていた。金を指輪に加工するにしても売却するにしても、真珠を外して正確な重量を知る必要がある。そこで、以前から何度かリフォームを依頼していた宝石店へ赴いたら、何と閉店していた。

というわけで、新しい宝石店、または工房探しをすることに。日本のジュエリータウンである御徒町も視野に入れたが、まずは日本橋高島屋の中にあるオーダー・リフォームなどを請け負う店舗へ。真珠を外してピアスに加工するのに、(当時の相場も踏まえて)プラチナで8千円、18金で1万3千円。着用した時に金属の部分はほぼ見えないので、懐事情とも相談してプラチナに決定。約2週間の後、一粒ピアスと、真珠が刺さっていた針状の部分が剝き出しになった指輪とに分離された。

予想通り金の部分は約9グラム。これを全て使って指輪にしようと思ったのだが、これがまた想像より難しい事だった。

金なのだから溶かして固めれば、思い通りのジュエリーが創れるだろうと思っていたのだが、そんなに甘くは無かった。今までもジュエリーをオーダーしたことは何度かあったのだが、手持ちのジュエリーを再利用してのリフォームは初めて。再利用は新たに注文するより難しいという事を知ったのである。

今回も金を下取りにして、新たにオーダーすることを勧められたのだが、あくまで金を溶かして再利用したかったので、それが可能な選択肢をお店の人といろいろ模索。全部利用して1つの太い指輪を作る事すら困難で、すでにに決まった型の物から選ぶという選択肢しかなかった。そこでいよいよ、数々の工房がある御徒町で探す事になった。

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上写真が真珠を外した後の実際の指輪。下はピアスと指輪に生まれ変わった姿

テクノロジーのおかげもあり、SNS上で指輪の写真を用いて、リフォームの選択肢、概算の見積もり、大体のデザインなどが決定。加工費なども考慮に入れて、1つの工房に絞り、実際に赴き、最終的な調整となった。

今回の目的は、肌身離さず着けることが可能なデザイン。指にフィットする適度な厚みは必須だが、出来るだけ幅広の指輪。シンプルなバンドの表面にエッチング的な技法で、柄を入れたいと思っていたのだが、その工房では柄は入れられないとの事。

そこで、柄は後からでもなんとかなるだろうと踏み、とりあえず装飾の無い指輪の制作を依頼。18金は金以外の金属を25%含むという特性があるため、その25%の金属の性質によって、加工中に一部ガス化してしまい、少量なれど目減りすると言われた。それが最大10%で、9グラムの金の持ち出しでも8グラムにまでなってしまうとの事。それも了承したうえで、加工費が7万1千500円也。そして2週間後。出来上がったのは極々シンプルな8・4グラムの金の指輪。

目をつけているダイヤモンドを今年か来年に購入する予定なので、その時はこの指輪を再々利用して、理想のダイヤモンドの指輪を創るのが目標。

時間をかけて、自分の理想を形にするのは、金銭では量れない贅沢さがある。残りの人生、少数精鋭のジュエリーを携え過ごすことが出来たら。そんな思いで、シンプルな指輪を眺めるのもまた幸せな時間なのだ。

金子倫子
80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。