ポメラートの色石に魅せられて
By 金子倫子
スポーツ観戦は楽しい。マリナーズの試合を球場で見た事も何度もある。しかし、今どきは時差のある世界の隅々からさまざまなスポーツが中継で視聴できてしまう時代だ。ハマると年中寝不足という事態になりかねない。
それもあってオリンピック以外のスポーツ中継は避けてきたのだが、先日のバレーボール女子世界選手権は興奮した。久々にテレビ放送の時間を前もって調べるほど、熱意をもって視聴した。バレーボールなので、アクセサリーなどを手元に着けられない分、耳と首元がキラキラしていた。選手各々の装いをしていたが、その中でもキャプテンの石川真佑選手。初の兄妹キャプテンという事で話題だったが、25歳という若さながら「リーダー」とはこういうものだという姿を色んな場面で見せてくれた。プレーヤーとしての素晴らしさはぜひ動画などで見ていただきたいので、ここではジュエリーの話を。
頭頂部はセンター分けでキッチリ結んで、長い髪をお団子にしていることもあり、耳元が際立っていた。ピアスは複数あいているようだが、その中でも耳たぶで小さく揺れるピアス。見た瞬間、おそらくポメラートの「ヌード」シリーズだろうとは分かったのだが、石の色味はブルーのように見えた。ピアスがはっきりと見える画像や動画が中々見つからず、本人の公式なコメントも無いため、ネットでは透明な乳白色のミルキークオーツだろうという憶測が多い。私はスカイブルートパーズの様な気がしてならないのだが。
ネックレスに関しては、「ポムポムドット」コレクションであろうピンク色のペンダント。1974年以来ポメラートのアイコン的なデザインと公式ウェブサイトには載っているが、2024年にリバイバルされたバージョンしか知らないので、最初に見た時はディズニーキャラクターのベイマックスかと思った。もちろんそんな訳はなく、ボタンをイメージしたローズゴールドの円形モチーフとなっている。石川選手のものはピンク色のチューライト(桃簾石)で、中央の一文字の糸を表す部分は小さなダイヤモンドがパヴェ状(小さなダイヤモンドを石畳のように隙間なく敷き詰める技法)に配されている。このペンダントはリバーシブルで、反対側はマザーオブパールで糸部分はゴールドのみとなっており、どちらのサイドにするかで違った表情を見せる。
日本限定、チューライトの「ポムポムドット」©︎Pomellato
チューライトは鉱物学的にはゾイサイトの一種で、同じゾイサイトとしては青紫のタンザナイトがある。ずいぶん昔にタンザナイトの事はこのコラムでも取り上げたことがあったと思うが、タンザナイトのほとんどはタンザニアで発掘されており、ティファニー社が名付け親で1968年に大々的に売り出した。画像などを調べて頂ければ分かるが、チューライトとタンザナイトが鉱物学的にゾイサイトと呼ばれる仲間だとは信じがたいほど、全く見た目が違う。それもあって透明度の高い青い石がゾイサイトの一種だと分かったのは大きな発見だったのだ。話が逸れてしまったが、チューライト使用のポムポムドットのリバーシブルペンダントは、ポメラート銀座店の限定アイテムで、5月時点で38万5千円となっている。
石川選手は現在イタリアのチームに所属しているし、元々「金のポメラート」と言われるぐらい(最近はあまりこの表現を聞かないが)シンプルでしっかりとした、ボールドなデザインが多い、イタリアを代表するジュエラーであるポメラート。石川選手にとてもしっくり似合っている。彼女からもポメラートからも、公式なコメントが無い以上あくまでも憶測でしかないが、まあ間違いないだろう。
ポメラートの知名度を上げたのは、間違いなくヌードシリーズのジュエリー。最初は確かブルートパーズ、アメシスト、シトリンなどの半貴石のリングからだったはず。正面から見ると、石の部分が正に裸の様にありのままの姿で巧みにリングにセッティングされている。どうやって留まっているのか不思議なくらいで、石を愛でるに相応しいデザイン。
ポメラートのジュエリーの多くは、丸みや柔らかさを感じるデザインとなっている。
プレーのみならず、今後の石川選手のジュエリーにもまだまだ期待したい。











