初の女性総理大臣の誕生?
By 金子倫子
*コラム印刷以降の令和7年10月21日に、高市早苗氏は第104代内閣総理大臣に任命されました。
史上初の女性自民党総裁。高市氏がこのまま初の女性総理大臣か?と思いきや、公明党が26年続いた連立政権から離脱を表明。初の女性総理大臣誕生への道は、一気にいばらの道に。
総裁に選ばれた当日の高市氏は、青のジャケットに共布のワンピース。それに黒のパンプス、パールのイヤリングと一連ネックレスを合わせた。「パールのイヤリングは女性政治家の角隠し的なアイテム」と以前このコラムでも書いた事があったが、今回も例外ではない。
濃いめの眉毛や口紅の色など、SNSなどでもいろいろ批判されてきた高市氏だが、母親の形見だという一連のネックレス、9.5ミリ珠ぐらいだろうか。大粒の強い存在感で顔周りを柔らかく包み、多少柔和に見せた。パールの効果だけでなく、総裁選当日はメイクも全体的に少々色味が柔らかいものだった様に思う。
あのエイブラハム・リンカンーン大統領も、少女からの手紙によるアドバイスで髭を伸ばしたという逸話もあるぐらいだから、政治家と見た目の好感度の重要性は昔から変わらない。
元々はビジネスを学ぶ目的で松下政経塾に入塾したのに、アメリカ連邦議会にコングレッショナル・フェロー(外部の者が議会スタッフとして派遣され、実際に立法課程を経験するというプログラム)として1987年から2年間派遣され、米民主党下院議員の事務所で働いた経験を持つ高市氏。その影響で政治を志し、帰国後にキャスターとしてテレビに出ていた頃は、いかにも日本のバブル時代の女性の装いという感じで、高く盛ったトサカ前髪に大振りのアクセサリーを着けている画像も多々残っている。
そもそもバブル経済期の大きい肩パッドやボディコンシャスな服装は、80年代の女性の台頭やエンパワーメントを表現したものと分析されることが多い。それを考えると、はっきりした色味のメイクや、未だに少々肩幅が大きめのジャケットが多い高市氏の装いは、バブル期の日本や在米時代のレーガン政権下の強いアメリカ、女性のエンパワーメントの具象化の様な気がするのだ。
女性のエンパワーメントと言えば。実は先日、前回のコラムで紹介したポメラート社の展示会に行ってきた。内容は、1982から84年に写真家のヘルムート・ニュートンとコラボレーションしたキャンペーンの写真とジュエリー。背景にあるテーマが、先にも述べた女性のエンパワーメント。前回のコラムで「以前は金のポメラート」と言われていたと言及したが、「チェーンのポメラート」でもあった。創業者のピノ・ラボリー二氏はチェーン専門の金細工職人の家系に生まれたそうで、さまざまに繋がれたチェーンのジュエリーのアーカイブ作品が展示されていた。展示の写真は白黒やセピア色。イベントの宣伝にも使用されたメインの1枚には、コーヒーテーブルに着座するサングラスを掛けた女性が前のめりになり、コーヒーカップを手で囲む。おそらく深紅で塗られているであろう爪、それと対比する白い左手薬指には、関節の半分を優に占める太いバンドリング。左手首にはチェーンとプレートの太いブレスレットが1本。鎖のコマや繋ぎ方が一つひとつバラバラな4本の太いチェーンネックレスが、首からコーヒーテーブルに垂れ下がる。
このリングと同様のデザインは今でも販売されていて、石のついていない地金だけの物だと、太さによって30万から60万円程。この写真の女性、口元がしっかり結ばれ、その表情には太々しさすら感じる。そして圧倒的な強さがあり、その強さになんの言い訳もない。
高市氏のパールは形見なので、エンパワーメントとは全く関係ないであろう。でも、思えば昨年の米大統領選でカマラ・ハリス元副大統領もずっとパールのピアスを身につけていた。女性の政界トップが未だに出ていない日本とアメリカ社会の根深い保守性と、好感度に寄与するような柔和な雰囲気のパールを選ばせる心理とを結びつけるのは、飛躍しすぎだろうか? 女性政治家のパールを見るたびに、本当のエンパワーメントはまだ先なのではないかと感じてしまうのだ。
形見の一連ネックレスは、初の女性総理大臣誕生の瞬間を優しく照らすのだろうか。












