Home 食・旅・カルチャー 地球からの贈りもの~宝石物語~ 「倫子」が熱い! 〜3月8...

「倫子」が熱い! 〜3月8日号掲載回後編 〜地球からの贈りもの〜宝石物語

「倫子」が熱い!〜3月8日号掲載回後編

By 金子倫子


前回から引き続き、「知命」である50歳を迎える筆者の心の叫びの1篇。

ひと昔前まで、50歳女性像の代表格と言えば「サザエさん」の母、フネさんだったのが懐かしい様に感じる。令和の今、高齢化や人口比率を考えると、50歳はまだまだ人生の半ばほど。シニアとしての利権を使えるのは、せいぜい映画館やJRが提供する一部のシニア割チケットぐらいだろうか。

脱線してしまうが、どうしても始めに言いたいことがある。タイトルにもあるように、今「倫子」が熱い。現在放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公藤原道長の正室はみなもとの倫子りんし。小学生の頃読んだ、日本の歴史マンガでこれを知った。読みは違えど、「倫子」という字を使う名前を自分以外で見たのは初めてだったので、それはそれは歴史にはまったのだった。さらにフジテレビでこちらも放送中の「大奥」の主人公で、第10代将軍徳川家治に嫁いだのも五十宮いそのみや倫子ともこ で、113代東山天皇の孫に当たる。ちなみに源倫子も宇多天皇の曾孫で、やんごとなき血を継ぐ者だ。子どもの頃にインターネットがあったら、古今東西の「倫子」を調べ上げ、その人生に思いを馳せ、もっとこの名前が好きになっていたかも知れない。

さて本題に入ろう。気持ちは若いままなのに肉体の衰えが不動の事実となった、筆者こと、この倫子みちこ 。首に深く刻まれた皺をどうやってカモフラージュしようかという話の続きをしたい。頭でっかちで首が太い私にはネックレスというのはどうも似合わない。チェーンを長くし、縦長を強調するようなモチーフのV字効果ですっきり見せでは?とも考えた。だが、そもそも首に金属の感覚が好きではないという、元も子もない事に気がついた。ただ最近はダイヤのフープピアスだけでは、上半身の華やかさやインパクトに欠ける。人の視線を集めるようなアイテムが欲しい。

その頃偶然読んだ本の内容に、人はほとんどの場合右側、すなわち向かい合っている相手の左側を見る傾向があるとの記述があった。顔の左側が明るく見える様にすれば、それだけで好感度が上がるらしい。左側に着けて、人の目を引きそうな物…‥人生で初めてブローチの存在意義に気づいた。自らブローチを欲する事になるとは夢にも思わなかったが、ひらめいた後はブローチ以外考えられない。その足でコスチュームジュエリーと呼ばれるような、アクセサリー的な物をデパートにて購入。

ブローチを外交手段のひとつとしていた、故オルブライト国務長官の様になりたい、などと図々しい事は言わない。ただ、人から見た時のフォーカルポイントとでも言おうか。人前に立つ時、そんなブローチの戦略的な使い方は悪くない。好調な業績などを「右肩上がり」と表現することがあるが、たとえば事業改善のプレゼンテーションでは、人の無意識に訴えるため、右側が高くなるように着ける。右が上がっているのが分かるようなデザインで、ある程度大振りの物が求められる。

筆者の鑑定士への道の第一歩のきっかけとなったのは、肌身離さず身に着けるジュエリーについてのエッセイを読んだこと。それもあり、服ありきで存在するブローチはまるで眼中になかった。しかも着物文化にはブローチというより帯留め。多くの帯留めはダイヤモンドなどの貴石ではなく、サンゴや琥珀などを使ったものが多く、何とも地味で全く興味をひかれなかった。大人になってコスチームジュエリーを得意とするシャネルのブローチなどを知ったが、逆に無駄に派手過ぎる気がして、自分とは遠い世界の物だった。

肌身離さずというポリシーは変わらないのだが、入浴など以外は基本的に服を着ていることを考えると、ブローチを着用できる時間は案外長いかもしれない。

代名詞的なカメオから、動物、スポーツアイテムや楽器、その他何でもありのさまざまなデザイン。数㌦から数十万㌦に至るラインナップ。素材だって何でもありと言っていい程の多様性。私も今年ひとつ、貴金属と貴石を使ったブローチの本気買いを狙って、日々ネットサーフィン三昧に勤しんでいる。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。