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見極める力〜地球からの贈りもの〜宝石物語〜

見極める力

By 金子倫子


元旦の能登半島地震、その翌日に起きた羽田空港での日本航空旅客機と海上保安庁航空機の接触事故、そして23日には東北・上越・北陸新幹線の架線トラブル。

航空機の接触事故は未だ調査中なので無責任な発言は避けたい。しかし衝突場面や機体の炎上動画を見ると、回避不可能な事故だったのか? と思わずにはいられない。そして同月末に発生した、新幹線の架線復旧作業中に全身火傷の重傷者を出した感電事故。こちらも調査中だが、停電中だったはずが、「通電していたことは作業者に伝えていた」という現場リーダーの発言が報道されている。火傷を負った作業者は架線には接触しなかったという話もあり、感電の経路を含めまだまだ調査が必要なようだ。

筆者の友人である第一種電気工事士によれば、現場で「電気を切りました」という言葉を信じてはいけないそうだ。必ず自分で器具を使って測定し、本当に電気が流れていない事を確かめなければ、結局のところ自分の命を守れないとのこと。

生成AIや精巧に作られたフェイクニュースなどへの危機感が叫ばれる中、正しい情報をどうやって得るのか? という事が今まで以上に重要になってきたのではないか。自分が得た情報の正確性は? 紛い物ではないと確かめる方法は? 正しい情報や知識の得かたを日々学ぶことは、今の時代、必要不可欠なスキルになっている。

物理的な物に対して「本物を見極める力」というのも一朝一夕では育たない。宝石、骨董、アート、それに最近はスーパーコピーと呼ばれる精巧に作られたブランドのコピー品など。肉眼で見極めるにはすこぶる難しい物が世の中にはたくさんある。

よく「宝石を見ただけで本物か分かる」と言う人がいる。プロであれば、おおよそ9割ほどが正解を言い当てる。しかし残りの1割は、器具などを用いないととんでもない間違いにつながる。

そもそも宝石において、「本物(リアル)」という表現は適切ではないとされている。たとえば、養殖だろうと天然だろうと加工されていようと、真珠は真珠であって、それ以外の偽物ではない。何だか一休さんのとんち比べのようだが、言葉のあやふやな部分で消費者が騙されないよう、宝石業界も努力している。

最近は消費者もネットで下調べや前知識を得てから購入する人も増えた。しかし素人が見極めるには、宝石はあまりに高価でリスクが高い。

偽物は買いたくない、騙されたくないという場合には、まず第1に、直接店舗で購入をしよう。オンラインで購入する場合は、確実に存在する場所に店舗がある事実を確認することが重要だ。店舗を持つ経費を削ることでその分値段に還元するとうたい、マンションの1室や倉庫などからビジネスをする小売も多くある。しかし個人的に一般人におすすめしたい購入元ではない。

第2に、最低でもK○○(カラット)やPt〇〇(プラチナ)など刻印のあるものを選ぶこと。しかし残念ながら実際は刻印も絶対ではなく、刻印にある数字よりも貴金属の含有量が少ない物が売られているという調査結果がある。確固たる店舗を構えるような小売りは仕入れもきちんとしていることが多いので、その点でも店舗での購入が安全だろう。

どうしても「本物」か否かを知りたければ、鑑定機関で鑑定してもらうのが良い。筆者の古巣でもある、米国宝石学会(GIA)は世界でも最も厳格な基準で鑑定していると言われるが、ほかにも数機関が鑑定・鑑別のレポートを作成している。ダイヤモンド、天然カラーダイヤモンド、合成ダイヤモンド、色石、真珠など。カラット数などによって変わるが、1、2カラット位で約2万円弱ほど。大物を購入する際は、こういったレポートが付いているか、または自身が売却する場合は、レポートで品質等を証明できればネットなどで市場の適正価格を調べたり、値段の交渉にも役立つ。

与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、常に正しい情報を得ようと努力する心構えが重要だと思うのだ。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。