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ダイヤモンドのサステナビリティ〜地球からの贈りもの〜宝石物語〜

ダイヤモンドのサステナビリティ

By 金子倫子

やっぱり、と言うのは少々はばかられるが、多くの人の予想を裏切ることなく、ジェニファー・ロペスとベン・アフレックが、8月に再び破局。約20年を経ての復縁、結婚だったが、人はそうそう変わらないということだろうか。

ジェニファーとベンの関係性から、故エリザベス・テイラーと故リチャード・バートンの復縁劇を思い出すのは、一定の年齢以上の読者であろうから、若い世代に向けてざっと説明しよう。エリザベスとリチャードは、1964年と75年に2度結婚し、どちらの時も離婚という結果に終わっている。ジェニファーとベンの場合、1度目は結婚式の直前に婚約破棄。2度目は結婚2周年記念日に離婚。

この女性2人の共通点といえば、婚約指輪コレクターとあだ名をつけられても仕方がないほどの、結婚や婚約の数だけ増えたであろう、多くの豪華なジュエリーたち。後年「離婚から数年後に売ってしまったことを、今思い出してもむかむかする」とエリザベスに言わしめた、「テイラー・バートン・ダイヤモンド」と名付けられた70カラット弱のペア型のダイヤモンド。これは婚約の際のギフトというわけでは無かったが、エリザベスとリチャードの関係だけでなく時代をも象徴するようなジュエリー。同様に、ベンとの最初の婚約指輪であるジェニファーの6カラット強のピンクダイヤモンドも、その後のカラーダイヤモンドの価値を大きく上げたとされるほど社会的インパクトをもたらした。このピンクダイヤモンドは、一度は購入元であるハリー・ウィンストンに戻り、そこから新しいオーナーへ渡ったとされている。

このレベルのダイヤモンドであるならば希少性もかなり高く、別れという最後を迎えたとはいえ、過去の所有者の逸話と共に付加価値が付く。その後誰かへの愛の贈り物になったのか、あくまでも投資の対象だったのかは知るすべもないが、オーナーは変わっても後年まで引き継がれていくであろう。
一般的には、所有しているダイヤモンドのジュエリーが婚約指輪のみという人は少なくない。それを考えると、わざわざ中古の婚約指輪を購入というのは、なかなか無いことかもしれない。ただ、最近は女性の経済的自立やエンパワメントの象徴として、自らジュエリーを買う女性が増えている。

少々古いデータだが、デビアス社のマーケティングによれば、2020年にはアメリカで31%、中国で34%、インドでも24%の女性が自分のためにダイヤモンドジュエリーを購入したとある。同社の2017年の調査では、2013年から2017年の間で、自ら婚約指輪を購入する女性が7%から14%にまで上昇したともある。近年の時代背景を考えると、購買力のある女性をターゲットにするのは当然の戦略かも知れない。

これらを踏まえて、女性が自らダイヤモンドを購入する際は、中古のものをおすすめしたい。マネーリテラシーの高い人であれば納得するはずの、まずはお得である事が1番大きな理由。たとえば、2017年のウェディング雑誌に新品で掲載されていた、某有名イタリアンジュエラーの1カラット289万円のリングが、大手ネットショッピングサイトでは同デザインの中古リング1・15カラットが138万円で販売されている。前記の雑誌にはグレードの詳細は記載されておらず、ダイヤモンドのグレードによって値段は変わるので単純な比較はできないが、同じように見えるものが中古になるとどれほどお得か、というイメージはつくだろう。

この10数年で状況はかなり改善されているものの、現在までに市場に出た宝石のほとんどは、死と隣り合わせの劣悪な労働環境による多大な犠牲が背景にある。別れの象徴とも捉えられる中古の婚約指輪を敬遠したいのは当然。だが背景にあるさまざまな犠牲を思った時、可能な限り有効活用することが、社会進出が進み自立した女性を含め、宝石を手にしたいという誰にでもできるサステナビリティではないだろうか。

離婚率が高い今、ピカピカの新品を揃えても別れる時は別れる。それであれば、未来の環境を考慮して、あえて「中古」という選択を一考してみるのもカッコいいと思うのだ。