リバイバル
By 金子倫子
半世紀生きていると、流行は一周してまた戻ってくるという現象を目の当たりにする事が増えた。日本のZ世代の間では、「平成女子リバイバル」と言って、1990年第後半から2000年代前半の当時小学生の間で大流行した物が、今また流行っているらしい。ビーズアクセサリーやシール交換、当時のサンリオキャラクターにたまごっちなど。昭和女子の私にとっては、懐かしいと思えるものではないが、AIの時代に逆走しているようで、興味深い。

ダイヤモンドの世界でも流行が一周してリバイバルという事は多々ある。ジュエリーの流行は多種多様で幅広い話になるので、今回はダイヤモンドに焦点を当てよう。ダイヤモンドの流行は、形やカットに表れる。昨年婚約した、作詞作曲も手がけるエンターテイナーでビリオネアでもあるテイラー・スウィフトが披露したオールドマインカットの婚約指輪。100年以上前に一般的だったこのカットが、再び脚光を浴びるきっかけとなった。キンドレッド・ルーベックという手彫りをジュエリーに施すデザイナー兼ジュエリー職人のオリジナルピース。10カラット前後といわれる縦長のクッション型のダイヤモンドが、手彫りが施されたゴールドバンドにセットされている。ベゼルセット(宝石の周囲を金属の枠で囲んで固定する技法)かと思いきや、先の尖った爪が4隅からダイヤモンドを支えている。2021年に手彫りのコースを受講した事が手彫りをするようになったきっかけらしいが、数多あるジュエラーの中で、数年でテイラーの心を鷲掴みとは、この先も素晴らしい作品を作っていくであろう。
ダイヤモンドの話に戻ると、この縦長のクッション・オールドマインカット。名の由来は、南アフリカを代表する新しい鉱山に対して、ブラジルやインドの古い鉱山(オールドマイン)という意味から来ている。新しい鉱山のダイヤモンドは産業革命と平行するように、カットと研磨の道具や技術向上のため、現在の不動の王者ラウンドブリリアントに代表される、ギラギラの輝きが象徴的。
対して、昔からのダイヤモンドは元々ある石目に対し、ある種「割る」に近い行為で手作業で形作った為、形や仕上がりがまちまちであった。58面は今のラウンドブリリアントと差異はないが、横から見た時、上部であるクラウンが高い。そして大きく違うのは、キューレットと呼ばれる、下部であるパビリオン(ピラミッドを逆さにしたとイメージすると分かりやすい)の先の尖った部分である。現在のラウンドブリリアントのキューレットはとても小さく、ダイヤモンドを正面から見ると殆ど見えない程。しかしオールドマインカットのキューレットは、正面から見た時には中央に穴が開いているのか?と思うほど目立つ。
時代的には重複する部分もあるが、オールドマインとブリリアントカットの間に位置すると言える、「オールド・ヨーロピアン・カット」という物もある。こちらは正面から見ると丸だが、こちらも手作業でカットをするために、面のサイズや形においても、現在のラウンドより一貫性に欠ける。オールドマインと同様に上部のクラウンが高いが、キューレットは遥かに小さい。
このオールドと名の付く二つのカットは、手作業である故の不揃いの温かみというか個性を持ち合わせる。間違いなく唯一無二。
マーセル・トルコウスキーが発明した現在のラウンドブリリアントカットの様に、計算しつくされた反射による輝きは無いとしても、不揃いだからこその心を奪われるきらめきがあるのだろう。
ラウンドブリリアントは研磨後に大きさが原石の半分以下になってしまう程、より良い輝きのために無駄にしてしまう。
一方オールドマインカットは、原石をなるべく無駄にしない様に手作業でカットされるので、歩留まり率も高く、とてもエコなのだ。
令和に平成の流行が再熱するように、時代を代表するエンターテイナーの一人であるテイラーの選択も、若い女性の中で温かく個性的な輝きを再燃している。












