ついに来た!
ラボグロウンダイヤモンドの台頭〜後編〜
By 金子倫子
アメリカ独立記念日である7月4日、今年はたまたま大坂万博で過ごすこととなった。あまりの暑さに万博を十分に堪能できなかったのは残念だったものの、技術の進歩がAIだけでなく、さまざまなハードウェアにも普及している様を実際に見られたのは良かった。
さて前回に引き続き、宝石界の技術改革の一つであるラボグロウンダイヤモンドについて。まず少し前回のおさらいをすると、2024年の婚約指輪の半数以上がラボグロウンダイヤモンドで、今や値段は同品質の天然ダイヤモンドの1、2割程度。2018年にはFTC(連邦取引委員会)によって、ラボグロウンダイヤモンドも本物のダイヤモンドと認定された。
識別するにあたり、ルーペなどの拡大鏡を使ったところで違いは分からないので、もう少し専門的な機器を使う。昔からよくいる、「自分は経験豊富だから、見ただけで違いが分かる」などと言う、エセ鑑定士には気を付けなくてはならないちまたにはいくつか判定用の機器があるが、我が古巣のGIA(米国宝石学会)はiD100™という検査機器を開発した。約5700ドルとなかなかのお値段だが、ラボグロウンダイヤモンドに限らず、イミテーション等を含む鑑定鑑別におけるGIAの現在までの知見が詰まっているとのこと。この機器では一般的なダイヤモンドの色DからZまでや、青や茶のダイヤモンドの識別も可能。さらに追加料金でソフトウェアのアップグレードをすれば、ピンクから赤までのダイヤモンドにも対応する。直径0.9ミリまたは0・005カラット以上に使用でき、2秒以内に判定が下される。判定は「PASS(合格)」、もしくは「REFER(参照)」で、PASSなら間違いなく天然のダイヤモンド。もしREFERと出たら、イミテーション、ラボグロウンダイヤモンド、もしくは汚れたダイヤモンドのいずれかであり、追加のテストが必要となる。この機器はすでにジュエリーの1部となっているダイヤモンドにも、まだルースの状態のどちらにも使用できる。
どのようなからくりで判定しているのかというメカニズムだが、簡潔に言うと発光パターンを識別しているとのこと。一般的には、蛍光性の違いで識別し、ラボグロウンダイヤモンドはUVライトを充てると赤、天然は青の蛍光色で発光すると言われることが多い。しかしながら、天然ダイヤモンドにUVライトを当てた時の蛍光色は、青だけでなく黄、ときには赤ということもある。よって赤いからラボグロウンダイヤモンドと結論づけるのはおすすめしない。天然ダイヤモンドの約30パーセントに蛍光性があると言われるが、天然だとUVA(紫外線A波)でより鮮やかに発光し、ラボグロウンダイヤモンドだとUVC(紫外線C 波)でより鮮やかに発光するとも言われる。私自身、ラボグロウンダイヤモンドの技術進歩に知識が追い付いていないので、これを機に学び直しを含めたアップデートが必要なようだ。
FTCがラボグロウンダイヤモンドも本物と認めたことで、業界としての信頼を確保するべく、天然と人工をきちんと消費者に開示する必要性が出てきた。ダイヤモンドのガードル(上部のクラウンと下部のパビリオンを分ける境目)部分にラボグロウンダイヤモンドと刻印してあるものもあるし、レポート(鑑定書)が付随しているものもある。GIAも天然のダイヤモンドには、レポートと似た証明書を発行している。GIAレポート番号に加えいわゆる4Cと言われる、カット(CUT)、カラー(COLOR)、クラリティ(CLARITY)、カラット(CARAT)はもちろんのこと、アイデンティフィケーションの項目としてラボラトリーグロウンと明記され、追加情報の項目には「これは〇〇工程によって人工的に生成されたもの」「生成後に〇〇の目的のために加工が施されている」といった内容も含まれる(そういった加工がなされていた場合)。
業界がどんなに頑張ったところで、悪事を働く人は必ず居るし、天然だと思っていたダイヤモンドがラボグロウンだったというような被害はこれからも出てくるだろう。そもそも、ダイヤモンドの婚約指輪という存在そのものが大きな岐路にある。美しさから選ぶのか? 投資的な要素や価値があるから選ぶのか? 見栄のために選ぶのか?
婚約指輪など、大切な意味を持つジュエリーには選ぶ人の思考や哲学が反映される。人工か天然かという追加の選択によって、人生を共に歩むパートナーとの相互理解が、さらに深まるかも知れない。











