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人生ピースバイピース〜地球からの贈りもの〜宝石物語

人生ピースバイピース

By 金子倫子

ファッションの祭典、メットガラ。毎年5月の第1月曜日に開催されるこの催しは、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館付属、服飾研究所の資金収集を目的の一部としたもの。生ける伝説である、アメリカ版ヴォーグ誌編集長のアナ・ウィンターを委員長として取り仕切られる。毎回テーマが決まっており、招待客は各々テーマを自分なりに解釈した装いをまとって参加する。今年のテーマはダンディズムだった。

そして今回、企画運営委員会の委員長の一人として参加したのが、ファレル・ウィリアムス。ヒップホップを中心にさまざまなジャンルの音楽プロデューサー及び歌手として、業界でのキャリアは長い。彼が得意とする音楽のジャンルに馴染みが無い人も、2014年世界的に大ヒットした「ハッピー」という曲は聴いたことがあるのではないか。

このファレルの自叙伝的、しかも全編レゴ(R)アニメーションで表現した映画『ピース・バイ・ピース(英題:Piece by Piece)』が2024年秋に全米で公開された(日本公開は今年4月)。どちらかというと貧しい環境で育った彼の幼少期から、紆余曲折をへて成功、挫折、そして現在に至るまでが描かれている。全編レゴなので、生々しさや重苦しさが緩和されて、過去に携わった楽曲と共にポップな映画になっている。

実は彼、2024年の春夏コレクションから、ルイ・ヴィトンのメンズ部門のクリエイティブディレクターに就任し、ファッションの世界でもその地位を築き上げている。それだけではなく、ルイ・ヴィトン同様LVMHの傘下にあるティファニー社からも自身がデザインした「タイタン」というコレクションが同年から販売されている。サングラス3つを含む全36アイテムがあり、ジュエリーは3550~60000ドルの価格帯。最安値はリングで、黒いチタン製のアーム0・19カラットのダイヤモンドを配した18金イエローゴールドのモチーフが、中央にくるデザイン。対する最高額のアイテムは11~12ミリ珠の黒蝶貝のパールのネックレスで、長さが16・5インチと18インチがある。珠の間やクラスプ部分のモチーフには、18金のローズゴールドと計2カラット強のダイヤモンドがあしらわれている。

このコレクションには三叉槍(トライデント)からインスピレーションを受けた、円錐形のスパイクのような形状のモチーフがほぼ全てのアイテムに用いられている。 ダイヤモンドのスタッズピアスも、キャッチの部分が円錐形。このデザインに関しては、タサキ社のリファインドリベリオンのデザインと酷似している。タサキ社はパールで、ファレルのタイタンはダイヤモンド。通常キャッチ部分は耳の後ろにくる「裏側」という認識だが、円錐形のデザインにすることによって前側にすることもでき、宝石側を前にするか円錐形を前にするかで2通りの装いが楽しめる。

そのほかにも、船の舵や羅針盤をモチーフにしたような、中央に大粒パールが鎮座するリングなどもあって、シリーズ全体に壮大な海への憧れが透けて見える。

*イメージ

ファレルお気に入りのイエローダイヤモンド(画像は例)。薄い色から写真の様なビビッドな色までバリエーションに富む。また一般的に石言葉は「富み」や「自身」。成功者の彼には、ぴったりかも

「タイタン」を発表したファレルだが、ファレルと言えばイエローダイヤモンドというイメージがつくほど、ギラッギラに輝かせている。アッシャーカットと見受けられる、15~20カラットほどだろうか、かなり鮮やかな大粒のイエローダイヤモンドを薬指に。結婚後のこの10年ほどは、右手薬指にこの大粒ダイヤで、左手薬指にはシンプルなゴールドバンドが定番だった。それがこの1年位前から、既存と同じぐらい大粒のイエローダイヤがもう一つ加わり、左手薬指のゴールドバンドに重ね付けしている。この新しいリングは中央の大粒のみならず、バンド部分にもイエローダイヤが並ぶ。さらに、各5カラットほどのスタッズピアスを両耳に。そして少なくとも1つ1カラットはありそうなダイヤモンドが連なるテニスネックレスが、ここ最近の定番だ。

楽曲「ハッピー」が使用された映画『ミニオンズ』のキャラクターであるミニオンたちに負けない、鮮やかなイエローダイヤモンド。ほかにどんな才能を披露してくれるのか、まだまだファレルから目が離せない。