離婚リング
By 金子倫子
近年の金やプラチナ相場を見ると、婚約指輪だけでなく、結婚指輪すらも贅沢品という印象になってきた。婚約指輪と違い、結婚指輪は基本2本必要で、しかも地金の割合が多い。日本は圧倒的にプラチナが多数派なので、金に比べれば値上げ幅も少ないが、それでも今から結婚しようと思っている人達は大変だ。
日本人の多くは、アンティークや骨董と言われればさほど抵抗はないが、中古品と言われると、とたんにハードルが上がる。しかし景気のせいなのか世代のせいなのか、最近の中古品市場の成長は目覚ましい。
日々中古ジュエリー市場をチェックしていると、掲載から数日であっという間に売れてしまう物も多々あり、消費者がアンテナをはらせている事が顕著に分かる。ただ中古の指輪などはサイズ直しが可能なデザインか否か、私的刻印の有無が判断の焦点になる。私的刻印は基本的には数千円程度で消すことが可能だが、別れの証拠を見せつけられているようで、避けたくなる心情なのか、売れ残ることが多いように感じる。
日本では近年、離婚式というのも需要があるらしい。式の最後は二人で結婚指輪をハンマーで叩き潰すという形式が多いそうだ。やはりそれほどに指輪というのは結婚のシンボルなのだろう。
同時に、離婚指輪というのも注目を浴びている。ずっと前からそのコンセプトはあったし、私の周りでも離婚指輪という名称ではなくても、離婚の記念にジュエリーを購入した友人は居た。それがSNSの力を借りて、離婚指輪という名称と共に具体化されたのが、最近のトレンドの理由だろう。
約2年前、エミリー・ラタコウスキーという女優が自身のインスタグラムで、婚約指輪をリフォームした2つの指輪を離婚指輪と称して披露し、かなりの話題となった。その元の婚約指輪だが、2018年にSNSでお披露目したあとは一世を風靡し、真似る人が後を絶たない程だった。昔からあるコンセプトである「トワ・エ・モア(あなたと私)」と言われる、メインの宝石2つからなるデザインがベース。故ジャクリーン・ケネディが贈られたようなダイヤモンドとエメラルドなどの貴石が一つずつ並んでというのが一般的だった。一方エミリー自身がデザインした、新世代トワ・エ・モアは、大粒のペアシェイプとプリンセスカットという、全く違う形の2つが寄り添った指輪。セレブリティと呼ばれる人達がエミリーの指輪を真似て、それをSNSで掲載することで、さらにこのデザインが浸透した。
そしてこの婚約指輪が離婚指輪に形を変えた。ペアシェイプはゴールドバンドに少し傾いて配されたピンキーリングに。そしてプリンセスカットは両端に台形のダイヤモンドを従えた指輪になった。
宝石に罪は無いし、金銭的な価値もある事を考えると、感情に任せて相場の価値より遥かに安価で処分するのはもったいない。
リパーパス(再目的化)とでも言おうか、美しく生まれ変わらせて、新しい門出を祝う事ができたら、それはそれで素晴らしい。しかし結婚してから離婚までの期間にあった諸々を思うと、見るのも嫌だという人も多いであろう。その場合は、売却して資金を調達して、それを元手に何か新しい物と共に再出発というのも清々しい。
自身もリアリティ番組に出演するセレブリティであるが、元々はセレブリティのスタイリストである実業家のレイチェル・ゾーは、離婚後に自ら「フリーダムリング」と呼ぶ指輪を、朝の情報番組で披露した。人差し指の根元から第2関節に届いてしまいそうな程大きなオーバルカットのダイヤモンドの両横に、小さなオーバルが配された息子が石を選びデザインしたという指輪は、中央の大粒がレイチェルで、脇の小さいダイヤモンドが二人の息子を表しているそうだ。
番組でレイチェルは「女性はどうして誰かが指輪をはめてくれるのを待たなければならないの?」と言った。離婚だけでなく、女性は自身の節目、自身の存在を自身で祝うべきだと続けた。
名称は何であれ、人生の中のどの節目であれ、思ったが吉日。自分を祝おうではないか。













