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覚悟の証💍地球からの贈りもの〜宝石物語〜💍

By 金子倫子

エリザベス2世の葬儀から1カ月余。まだそれ程経っていないのに、早くも歴史の1ページになってしまったような距離感を感じる。女王が亡くなる数日前に謁見した、リズ・トラス英首相は在任約6週間と歴代最短に終わり、すぐに新首相が選出された。そんな目まぐるしい変化も、彼女が既に歴史の中の人になったように感じられるのを、後押ししたのかもしれない。

それでも私はもう少し、亡き女王に思いを馳せていたいのだ。

「クラウン」という英国王室を題材にしたドラマが人気らしいが、なんでもエリザベス2世の夫、フィリップ殿下の不貞のエピソードもあるとか。

実際はどうであれ、エリザベス2世の「愛情」、そして何よりも「覚悟」というのは普通の人間には到底想像しえない物だったに違いない。

愛のシンボルと言われる指輪だが、結婚指輪よりもプロポーズをする時の指輪は、やはり最も贈る側の気持ちが込められているのではないか。随分前に本コラムで言及したが、好きな相手からとはいえ、もしその指輪が「好きでないデザイン」だったらどうするか?そのまま受け取るか、好みの物と交換、またはリフォームするか。

私自身はというと、最終的にはリフォームを3回程するに至ったが、調べてみると著名人でもリフォーム派がそれなりの数いる。

故ダイアナ妃、その次男のハリー王子の妻であるメーガン妃、そして故ジャクリン・ケネディー氏もリフォーム派。

このシンボル的な指輪のリフォームは、物理的な変化以上の意味を持つのか。

ジャクリンが貰った元々のデザインは2・84カラットのエメラルドと2・88カラットのダイヤがメインで、バンド部分はバゲットカットのダイヤが連なる。この2つのメインの石がインヤン(陰陽)のシンボルの様に重なっている。エメラルドにもダイヤにも同じエメラルドカットが施されており、単純な表現をすると「同じ物の色違い」という見た目。結婚から10年、今で言うアップサイクルなのか、ジャクリンはバンド部分を、メインの石に近い方にマーキースカットをそれぞれ5つずつ、そして残りのバンドの部分は2列に小さなラウンドのダイヤを並べた。これはかなり大々的なリフォーム。

メーガン妃の婚約指輪は中央にボツワナ産の約3カラットのクッションカットに左右に小さなラウンドダイヤがひとつずつ。左右のダイヤはダイアナ妃の所有物から使用した。このリング、婚約時にはバンド部分はプレーンなゴールドだった。しかし、長男アーチーのお披露目時、愛息を抱く手に輝くこの指輪のバンド部分が極小のダイヤが連なった物に変わっていたのだ。

そしてダイアナ妃。多くの皆さんは「え? あの小さなダイヤに囲まれた大粒のサファイヤじゃないの?」と思われるだろう。私もそのひとりで、リフォーム前後の写真を見比べても、間違い探しの如く、どこがどう違うのか分からなかった。答えは爪の数。8個だったのが、14に増えた。「サファイアが落ちたら大変」と思ったのかは分からないが、計14の爪でより安定したのは間違いない。

ダイアナ妃の例は少し意味合いが違うだろうが、貰った物に手を加えるか、貰ったまま受け入れるか。その違いは、結婚や相手に対する向き合い方が指輪を通して透けて見える気がする。

エリザベス2世は母親から貰い受けたティアラの3カラットのラウンドダイヤを使い、ジュエラーと共に指輪をデザイン。それを生涯肌身離さず身に着けていた。ヴァージンホワイトは「あなた色に染まる」という事を意味するとも言われるが、この指輪も「添い遂げる」という覚悟の証の様に見えるのだ。

世界で最も有名な夫婦の一組であった2人の、多くの紆余曲折があったであろう結婚生活。君主としてではなく、ひとりの女性としての愛と覚悟が、あの指輪には宿っている気がしてならない。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。