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二度とないように

今週の英語面ではベインブリッジ島の日系関連の記事が掲載されている。大統領令9066号のもと、全米で初めての強制退去対象となったベインブリッジ島の日系人。その日にあたる毎年3月30日には特別行事が、日系人メモリアル「二度とないように」の敷地で行われれる。日系人強制退去から75年目となる今年は、例年以上に大きなイベントとなりそうだ。
ベインブリッジ島歴史博物館は当日の入館を無料とし、日系特別展を実施。午前11時から行われる式典では、ジェイ・インスリー州知事と佐々江賢一郎駐米大使が出席する。 午後4時から6時にはベ島美術館で日系関連の短編映画4本が上映され、休憩を挟み7時から、ベインブリッジ島日系人会のクラレンス・モリワキ会長による特別講演が行われる。
さて、本紙が毎週掲載する漫画「シアトル・トモダチ」では、モリワキ会長が体験した2002年3月30日の式典の様子が描かれている。
強制退去から60年目とあり、当時もゲイリー・ロック州知事、インスリー連邦下議(当時)ら、数多くの関係者が集まった。
式典も佳境を迎えたころ、会場近くに無数のカラスが集まってきた。同島から強制退去となった227人の名前が読み上げられた時、カラスが一斉に鳴き始めたという。
そして先亡者への黙とうを始めると鳴きやみ、式典の終わりと共に飛び去って行った。
不思議な体験だったとモリワキ会長は振り返っているが、その後、参加者の1人だったネイティブ系関係者から、黒い鳥が「先祖の魂」を意味することを聞かされ、大いに驚かされたという。
後ほどビデオで調べてみると、名前を呼ぶたびに一定の間隔でカラスが返事をするかのように鳴いていたという。
以来15年、同所で行わえるイベント、課外授業、ツアー、ゲスト訪問のたび、このストーリーを紹介した。カラスが鳴くたび、「立ち寄って、あいさつに来てくれたのは誰だろうか」と――。
30日の関連イベントの詳細はwww.bijac.org、もしくはカレンダーページで確認できる。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。