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高騰と余裕〜一石

By 佐々木 志峰

米国中西部を伸びるフリーウェイで車を走らせた。トウモロコシ畑が延々と広がるのどかな農場風景。気温こそまだ高いが秋の色合いも出てきた。穂が高い。ハロウィーンに向けた準備も始まっているようだ。

太陽が地平線へ傾き夕方を迎えると、一面オレンジ色の絶景となった。海がすぐ隣にあり、緑の山々もあって起伏に富む当地では見られない別の美しさだった。ふと思った。海ははるか遠く、それを越えた先にある他国、地域の情勢など、どれだけ関心を持ってもらえるだろうか。広大な米国の一面を感じた。

道脇に建つガスステーションを見ると、安い。1ガロン3ドル以下。ちょうど1ガロンあたりのガソリン価格で、ワシントン州が全米で最も高額となったというニュースを見たばかり。どちらも衝撃だった。

全米自動車協会(AAA)によると、9月15日段階でワシントン州は1ガロンあたりの価格で全米平均を1・481ドル上回る4・658ドルになったという。キング郡は4・871ドルだった。前週は海に囲まれた島々のハワイ州を抜き、カリフォルニア州に次ぐ2番目の高額州へ。そしてついには、圧倒的に高いと思っていたカ州も抜いてしまった。

ワ州で最も高額となったのは2022年6月16日の1ガロンあたり5・56ドルだそうだ。当地で3ドル以下といえば、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた2020年が最後。2015年前後、そして2010年前の金融危機の不況時期も値段が落ちていたが、そのほかで記憶する限り3ドル以上が常態化していた。

秋となれば選挙の時期でもある。大統領選挙と中間選挙の間にある「静かな年」だが、シアトルでは市長選を控える。生活と大きく密着する自治体選挙。現職で日系のブルース・ハレル市長は8月の予備選で後れを取ったが、11月の巻き返しなるだろうか。

前述の中西部で訪れた仕事現場で、木の枝に大きな蜂の巣がつくられていた。働きバチが次々と出入りを繰り返し、懸命に仕事をこなしている。地上で走り続ける我々もこの蜂たちと同じようなもの。たまにはきれいな夕陽にじっくり目を向ける余裕も持ってみたい。