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ジュエリーオークションに見る2019年の景気

平成最後の年が終わろうとしている。それを思う時、昭和天皇の崩御の報道を学習塾で聞いた、中学2年の頃の自分を思い出す。平成はあまり長くないかなと思っていたが、30年が過ぎてしまった。一つの時代の終わりである。

贈るも贈られるも、プレゼントの事で頭を悩ませるのが12月。アメリカ感謝祭後のブラック・フライデーだが、なぜか日本でもブラック・フライデーやサイバー・マンデーのセールをする販売店が増えてきているそうだ。感謝祭ありきで、初めてその後のセールスが意味を成すと思うのだが、取りあえず受け入れてしまうのが日本である。

それはさておき、クリスマス・プレゼントの購入が最も多いのは、12月24日だそうだ。ネットなどで早く仕入れる人も増えた一方、ギリギリの人間は減らないらしい。夏休みの宿題を、夏休み終わる前日まで全く手を付けない子どものようだ。「三つ子の魂百まで」というくらい、人の本質は年を重ねたところで変わらないらしい。今はネットが便利だが、いつまでに注文すればクリスマスまでに届くか考えずに注文した人は、配達日のオプションを見て初めて遅すぎたことに気付く。ネットで買えないなら、やはり体を張ってプレゼントを買いに行かなければならない。というこで、結局24日になるらしい。

クリスマスにジュエリーは定番だが、その最たるものが12月にニューヨークにて開催されるオークションではないだろうか。前に何度もオークションの話題は書いたが、二大柱の「ザザビーズ」とクリスティーズの12月初旬に行われる「マグニフィセント・ジュエリー」オークションは、景気の指標にもなると考えている。数千万㌦越えがいくつもある年は、その次の年もかなり好景気が続きそうだし、予想価格より下回る結果が多かったり、目玉商品に買い手が着かずに終わるときは、年明けの景気はあまり期待できない。

それを踏まえて今年の二つのオークション結果を分析すると、来年の景気はあまりよくないだろうという感触だ。サザビーズの売り上げは4,600 万㌦で、クリスティーズの方は7,000 万㌦。クリスティーズの目玉であるブルガリ社の8カラットのファンシー・ヴィヴィッドブルーのダイヤモンドは予想価格が1,300万㌦~1,800万㌦で、実際1,830万㌦で競り落とされた。15カラットのピンクのハート型のダイヤモンドも950万㌦で、予想価格範囲内で競り落とされた。何がすごいって、この二つで総売り上げの半分弱を占めるということだ。

一方、前日に行われたサザビーズのオークションは芳しくなかった。最も高いのが51カラットのクッションカットの無色のダイヤモンドが400万㌦。そして25カラットのエメラルドカットのダイヤモンドが約350万㌦。両方ともほぼ予想価格で競り落とされたのは、無色のダイヤモンドは基準がはっきりしているので、値段の予想がしやすいことも理由の一つだろう。しかし、ファンシーカラーと呼ばれる色味のあるダイヤモンドの売れ行きは、かなり顕著に結果がでた。サザビーズの今回の目玉であった、10カラットのヴィヴィッドブルーのペアシェイプダイヤモンド。予想価は2~3,000万㌦だったが、結局買い手が着かなかった。ほかにも3カラット弱のピンクダイヤモンドも、予想価格が160万㌦とかなりお値打ちだが、買い手が着かなかった。天下のサザビーズの「マグニフィセント」のオークション最高落札額が、400万㌦とはちょっと情けない。

二つのオークション結果にかなり差があるので一概には言えないが、来年の景気の楽観視はしないほうが無難かもしれない。

ジュエリーを貰えるのはクリスマスを問わず嬉しいものだ。しかしそれと同時にこの季節に思うのは、来年も十分平和でありますようにということ。年号が変わる来年、皆様も良いお年をお迎えください。そして来年もよろしくお願いいたします。

(金子倫子)

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。