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メモリアルデー

毎年市内キャピトルヒルのレイクビュー墓地で行われている二世復員軍人会と同財団によるメモリアルデー追悼式は今年、新型コロナウイルスの関係で現地開催は中止となった。代わって団体ウェブサイトで映像を流し、バーチャルな形で長年続く恒例行事が挙行された。

 NVCコマンダー、財団会長の司会で各教会の法要や祈りや献花などのプログラム、地元政界関係者やコミュニティー団体代表者からのメッセージを含めて約45分。当地出身の二世というアン・ミナミ(南)海軍大佐の基調演説、山田洋一郎総領事の声も含まれていた。

 追悼式を含めレイクビュー墓地を訪れるたびに印象に残るのが、会場となる1949年建立の日系戦没者慰霊碑の周りに点在する日系人たちの墓石だった。家族なく当地で命を落とし、地元日系人会が弔い、今では芝生に点々とさみしく埋まる墓石も多い。参列者が多く仕方のない部分もあるが、ある年の行事で墓石の上に無造作に椅子が置かれてしまっていることに気が付いた。その中で、一歩一歩気を付けながら足を進めていたある日系関係者の姿を思い出した。

 本紙過去記事で目にしたことがあるが、メモリアルデーが迫ると日系庭師たちがボランティア清掃し、この小さな墓石たちの周りもきれいに整えられるという。メモリアルデーの週末は、地元仏教会がシアトル、ケント、タコマなどに点在する日系墓地を回って法要を行う。コミュニティーの関係者は「米国版のお盆」と話していた。

 メモリアルデーの追悼式映像の後半部には、2年ほど前に他界した故トシュ・オカモトさんや故ヒロ・ニシムラさんをはじめ仕事で世話になった懐かしい二世復員軍人の姿もあった。第二次世界大戦や日系人強制退去から80年ほどが経ち、経験を語ることのできる世代は限られてしまった。

 アジア太平洋ヘリテージ月間も今週で終わる。雨模様の空を見上げて、二世との交流や長く紡がれる日系史を思い返した。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。