Home コラム 一石 訪日の勢い〜一石

訪日の勢い〜一石

By 佐々木 志峰

ある仕事現場で、エレベーターを動かす初老のボランティア男性がいた。上階に向かう中で筆者と2人になると、突然日本語で話しかけてきた。聞けばビジネス関係の長期滞在を含め、何十回と日本を訪れたという。

一番のお気に入りは「姫路城」だとか。美しく堂々とそびえ立つ天守閣を懐かしそうな面持ちで振り返っている彼を前に、恥ずかしながら訪れたことがないと明かす日本人の筆者。「本当に!?」――。首を振ってため息をつく日本通。彼らの方が日本で訪れた地の数は、はるかに多いのではないだろうか。

そんな中、また「日本」を身近に感じる出来事が。

米大リーグMLBの開幕戦が東京で行われ、大谷翔平選手、山本由伸選手、佐々木朗希選手らを擁するロサンゼルス・ドジャース、鈴木誠也選手、今永昇太選手らを擁するシカゴ・カブスの2チームが対戦した。渡日後もスター選手の一挙手一投足を取り上げる日本からのニュースで、連日の盛り上がりぶりが伝わる。

観光立国への推進ぶりも順調。日本政府観光局(JNTO: www.jnto.go.jp)によると、2024年の訪日外客数の推計値は3686万9900人だった。これまで最も多かった2019年を約500万人上回り、過去最高を記録した。

訪日者数増加の勢いは増すばかりだ。昨年末の12月は1カ月あたりでの最高となる348万9800人を記録。そして1カ月後。年明け、2025年の1月でその数字をさらに大きく更新した。378万1200人――。前年同月から実に40.6パーセント、110万人近い増加となった。旧正月(春節)が1月にあったことで、中国などアジア諸国からの旅行需要が高まったと見られている。

もちろん米国も負けていない。23年の204万5854人から24年は272万4600人へと訪日数を増やした。今年1月も好調そのもの。18万2500人で前年から5万人強増やした。

為替を見ると、昨年1月は1ドル140円前半から徐々に円安に向かっていた。今年は1ドル157円台から徐々に円高傾向に推移していた。それでも、この日本訪問の人気ぶりを見ると、為替だけにとどまらないものがあると強く感じ始めている。