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オールスター戦〜一石

By 佐々木 志峰

米大リーグのオールスター戦。待ちに待ったシアトルで迎える今夏最大のスポーツ祭典は、長く記憶に残るであろう名シーンと共に、大いに盛り上がりを見せた。

リンク・ライトレールは10日、11日の2日間の利用を無料とするなど、街を挙げて成功を図った。試合当日、駅の駐車場は午前段階で満車状態。前日も夜遅くに駐車場から出て行く車が列をなした。パイクプレース・マーケットで出場選手のお披露目イベントとなる「レッドカーペットショー」が行われ、ダウンタウンに向かう混雑ぶりも相当なものだったようだ。

22年ぶりのシアトル開催。前回はイチロー氏の大リーグ1年目だった2001年。シーズン116勝の快記録を打ち立てたマリナーズからは8人が選出された。今回の試合前には、当時守護神として活躍し、オールスター戦でも試合を見事に締めた佐々木主浩氏がフィールドに姿を見せてくれた。野球に縁深い日系社会。強豪をうたった当時のチームに、大いに熱くなれたはず。

この時代に影響を受けた野球選手も少なからずいるだろう。今回のオールスターに選出された中にはシアトル出身の選手も。アリゾナ・ダイヤモンドバックスのコービン・キャロル外野手、22歳。前回のシアトル開催のオールスター戦世代ではないが、当地で育つ中でマリナーズの試合を見て、影響を受けた選手はイチロー氏であることを公言している。今季の活躍ぶりを認められ、ナショナル・リーグで新人王の有力候補となっている。

さて本番の試合。地元スターのフリオ・ロドリゲス選手もそうだが、注目はやはり大谷翔平選手。3度目の出場で、もはやスポーツ界の顔となった圧倒的な存在感が際立つ。「カム・トゥ・シアトル!」――。超満員の観客席から、大谷選手へのラブコールがまるで示し合わされたかのように響き渡った。

22年前、イチロー氏が快速を飛ばして一塁を駆け抜けた。そして今回の大谷選手へ向けられた大連呼。日本選手が確かな記憶を残し続けるシアトルのオールスター戦。次回開催はさらに次の世代まで待たねばならないだろうが、その時また、新たな日本選手がハイライトを残してくれるだろうか。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。