Home コラム 一石 漢字で一文字〜一石

漢字で一文字〜一石

By 佐々木 志峰

「税」――。日本漢字能力検定協会が2023年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」を一般募集し、最も多かったのが、この字だったそうだ。

為替や物価高なども話題となった1年。生活に直結した事柄が意識されたということだろう。「税」に続き、2番目は「暑」。3番目は「戦」。それぞれ納得がいくのではないか。野球関連も多かったようで、大谷翔平選手を連想させる「翔」が11位。立派だ。

過去の漢字一文字を見てみると、五輪、戦争、震災、世紀末、増税といった各年の動向を振り返ることができる。過去最も多いのが「金」の4回。五輪開催年だそうだ。「災」や「戦」は2回。「税」は消費税が引き上げられた2014年にも選ばれ、今回が2度目となる。

個人的に振り返るとすれば、1年を通して気になり続けたのは「円」、そして小さいながら変調の多かった「体」となるだろうか。そう考えると、今年の漢字で8位となった「変」が当てはまりそうだ。生活面では昨年末から実際に少しばかり変化を取り入れている。2024年にどのような改善が見られるだろうか。振り返ってみて「善」となっていれば何よりだ。

当地の23年はどのような一文字で表せただろうか。何気ない日常の会話で最初に出た話題がローン金利だったことを思い出す。MLBオールスター戦やクルーズ船利用者数の記録更新などレジャー面で成功を収めたが、新型コロナウイルスのパンデミックによるリモートワークの増加で、シアトル市内の賃貸オフィスの空き率が25%になったとの記事もあった。

シアトル警察署によると、23年1月から11月までの犯罪件数は減少したという。昨年同時期と比べ、凶悪犯罪は7%、窃盗罪は17%減った。昨年だけでなく、2年前よりも低い数字だという。それでも決して良いことばかりではなく、車両盗難や殺人件数は増えている。車を走らせば、ごみの散らかった歩道が目に入る。ガソリン補給に寄れば、ドアを開けるのを手伝おうとする声とともにホームレスが寄ってきたことも。

原稿を書き終えて新年に向かうと、日本では能登半島で大地震に見舞われ、予断を許さない状況が続く。大統領選挙もある1年。どのような年となるか、しっかりと向き合いたい。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。