Home コラム 一石 1月の締めくくり〜一石

1月の締めくくり〜一石

By 佐々木 志峰

出張先のフロリダでの会話。シアトルから来た、という話から始まった。

「天気はどう?」
「雨ですね。ちょっと前は凍えるほどの寒さでした。こっちは気持ちいいですね」
「夏には来ない方がいい。暑すぎるし、ハリケーンも来る」

一方は北西の端、もう一方は南東の端。どちらも良し悪しのある話だった。

そんな、当地とは対照的なところへ滞在した。少し前まで氷点下で凍えたこともあったシアトルから、一気に暖かな場所へ。華氏で最高80度近くに達する別世界。体が慣れるまで時間がかかる。

ところが、数日も経つと、気温が急に下がる。華氏60度台へ。そして帰宅当日は50度台。天気を見ると、最高気温に関してはシアトルの方が高かった。季節、そして地理からすると考えられない事態。不思議な1月の締めくくりだった。

前述の会話相手とのやりとりの続きで日本の話を持ち出すと、そちらの話が盛り上がった。家族のひとりが軍の関係で沖縄に長くいたことがあったそうだ。友人もいて、実際に訪日の誘いを受けているそう。2025年の大阪万博の話も出た。

翌日は別の関係者からも声を掛けられた。兄弟のひとりが30年以上も京都に住んでいるという。いろいろな縁がある。日本と米国が、太く、細く、いくつもの糸でつながっていると感じた。

ここ最近爆発的に伸びている海外からの訪日外国人旅行者数。日本の観光庁が発表した新たな推計値によると、23年の1年間で2500万人を超えたそうだ。同年12月だけ見れば、新型コロナウイルスのパンデミック前のピークよりも20万人以上多い273万4000人。昨年に限っては海外からの訪日数が最も多かったひと月となった。

米国は総数で19年から18・7%増として204万5900人。30万人以上伸ばすなど人気を呼んだ。カナダ、メキシコの北中米も強い伸びだった。

この訪日旅行者たちの消費額は実に5兆2923億円になり、19年の4兆8135億円を上回ったという。円安による割安感が消費意欲をかき立てたと見られている。日本から出張で来た同業関係者から聞こえた苦しい声には、同情せざるを得ない。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。