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戦いはまだ〜一石

by 佐々木 志峰

ワシントン州政府が8日、新型コロナウイルスの非常事態宣言を10月末をもって解除すると発表した。2020年2月に発令され、その間に出されてきた関連緊急命令は85。現在も残る州職員やヘルスケア、教育関係者へのワクチン接種義務といった緊急命令も10月で取り下げられる。

発令から2年半あまり。新型コロナウイルスの感染拡大。ワクチンを受け、さらにブースター接種も行った昨年。自分の身に起きたことなどが、少しずつ昔に感じられるようになった。

社会が前に進んでいく中で、仕事先の一部ではマスク着用を義務付けられている。出張時もマスクは必ず持ち歩く、もしくは常時着用を心掛けている。シータックの空港に向かう道路にある電光掲示板には、「マスク推奨」のメッセージが目に入る。

マスクを着用することで逆に違和感を覚えるような状況も増えてきた。それでもマスク自体にありがたさを感じることも。冷房がきつい飛行機内での防寒。ある街のダウンタウンに漂う空気や匂いに圧倒され、マスクの存在が役立ったこともあった。

シアトル・タイムズ紙に目を通していると、ヘイトクライム(憎悪犯罪)関係の記事があった。キング郡で憎悪犯罪に対する非常用電話回線の設置を検討しているという。キング郡の検察官事務所が憎悪犯罪に関わった件数は、新型コロナウイルスの感染拡大となった2020年に49。その前年の36から増加した。21年は37と下がり、22年はこれまでのところ10件という。

犯罪件数が20年から落ち着いているのは、外出や集まりなどに対する生活スタイルの変化もあるだろうか。それでも夏のある2週間で憎悪犯罪が3件まとめて発生し、7月にはアジア系女性2人が「中国に帰れ」との暴言や暴行の被害にあったと報じられた。憎悪犯罪につながりかねない不安要素は多い。物価高などのあおりを受け生活不安は高まっているかもしれない。コミュニティー同士の連携も再構築が必要となる。

新たな季節が到来した。秋から冬は風邪が流行する時期。筆者にとってまだまだマスクは必要。戦いも続くのだろう。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。