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第62回 どんなときも、商いを支えるのは

ご存じのように、新型コロナウイルス問題が、経済活動の様々なところで影響を及ぼしている。今回のようなことはしばしば起こることではないだろうが、日本では、地域災害は毎年のように起こっている。私が主宰するワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員企業も、毎年のように誰かが被災する。また、個々人、個々の会社においては、予期せぬアクシデントは、さらにしばしば起こる。たまたま今年の1月に、ある会員さんから、そのようなお手紙をいただいた。

そのお手紙は、ご夫婦で美容院を営んでいる方からのもの。「ご夫婦で」といっても、奥様はまつげのエクステンションやネイルの担当。美容院のヘア担当は旦那様のお一人だ。書き出しは、「ワクワク系をしていて良かったと思ったことについて、感想というか、お礼みたいな感じです」と始まり、こう続いていた。「2018年に入会して、毎日楽しく仕事をして売り上げも順調に上がってきていました。しかし、去年の4月に脳動脈瘤が出来ているのが見つかり、急遽、入院することになりました。4月末に見つかり、5月末に検査入院。6月初めに手術。お客さんにも予約を変更してもらったり、お断りしたりとすごく迷惑をかけてしまいました」

しかし、彼のアクシデントはそこに留まらなかった。手術のために検査をしたところ、なんと癌が見つかり、転移の恐れありとなったのだ。そのため、急遽、その手術を優先させ、7月初めに癌を手術。幸い転移もなく、腫瘍の種類も比較的優しいものだったので、抗がん剤は回避。次いで9月には脳動脈瘤の手術となったのだった。

昨年5月中旬までは通常通り仕事をしていたが、それ以降は、当然のことながら店を休みがち。まともに仕事ができるようになったのは12月中旬。トータルで2か月以上は完全に仕事をしていない状況だった。しかし、顧客らは快く予約の変更キャンセルに応じてくれ、いざ仕事が再開されると、あっという間に予約を埋めてくれた。「本当にお客さんに恵まれてるな」と実感したとのこと。そして売上は、そのような2019年だったにも関わらず、2018年と比較して、たった3%しか落ちなかったのだった。

今、日本社会全体は新型コロナウイルス問題で混沌としている。しかし、こういうときだからこそ、商いを支えるのは顧客だということを実感する。あなたに何があろうとも、あなたが再び立ち上がることを待ち望む顧客。その存在こそが、商いの盤石の基盤だろう。

山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。