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第100回 知恵を分かち合うということ〜招客招福の法則

By 小阪裕司

「知恵を分かち合うということ」

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある卸業経営者から、面白い(?)ご報告をいただいた。それは、顧客との絆作り実践においてのことだ。

彼がワクワク系マーケティングの存在を知ったのは、2021年に刊行された拙著『「顧客消滅」時代のマーケティング』。当時、価格と納期で同業他社と熾烈な競争下にあったという同社。彼も大いに悩んでいた中、本書に出合い「これだ!」と感じ、実践会に入会。以後、特に顧客との絆作りに力を入れた実践で価格と納期の競争からも脱却。現在は日々楽しく商売を行い、業績も堅調だ。

そんな中、先日行われた、全国から実践会員が集う場に彼も出席。多くの方と名刺交換ができたそうだが、今回の報告はその後の出来事についてだった。

お客さんに限らず、「出会ったら、つながる」というのがセオリーのひとつであるワクワク系。そこで名刺交換をした人たちから後日続々とレターやメールなどが届く中、あるハガキに目が釘付になった。それは、ハガキの裏面上部に大きく「感謝」と書かれ、下に手書きで一筆メッセージが書き込めるようになっており、下部には社長の顔写真と自身の簡単な自己紹介などがあるものだった。そこで彼は気づいた。自社が今、名刺交換したお客さんに送っているハガキと仕様がほぼ同じなのだ。それもそのはず、ワクワク系の学びと実践を始めて早々、彼が参考にした事例がこの会社の事例だった。同じBtoBの事業者ゆえ真似しやすかったこともあり、まさにこのハガキを真似させてもらったのだ。それから2年。すっかり自社の活動として定着しており、効果も実感しているこのハガキ。同社においてあまりにも自然な活動になっており、真似させてもらったことも忘れていたのだそうだ。

私たちはもう20年以上に渡って実践会を主宰しているが、その大きな理由のひとつは、成果が出るやり方や、具体的な事例を分かち合うことだ。今回の彼も、「絆作りをやってこなかったわが社は何をすればよいか分からなかったので、事例を見て真似するのが手っ取り早かったのです」と言うが、そうするために我々は集っている。さらに彼は「実践して習慣化すると、真似させてもらったこともすっかり忘れていました」とも言うが、分かち合われたからには、そうなることが望ましい。

変化が速く激しいこの時代、「知恵を分かち合う」ことがとても重要だ。ワクワク系マーケティング実践会24年。このコラムも今回で100回を数える。これからも一層、意義ある分かち合いを続けていきたい。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。