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第98回 「なぜこの商品は売れに売れたのか(前編)」〜招客招福の法則

By 小阪裕司

「なぜこの商品は売れに売れたのか(前編)」

今回は、誤発注により大量に入荷してしまった商品が、結果的に追加発注するほど売れに売れたお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、牛乳販売店からのご報告。ちなみに「牛乳販売店」とは、顧客宅に契約期間、定期的に牛乳を届ける宅配ビジネスだ。

話はクリスマスシーズンにさかのぼる。顧客に自店らしいクリスマスプレゼントをお届けしようと、取り扱い商品であるミネストローネスープに決め、9百袋を発注した。ところが誤って2回発注してしまい、倍の1800袋が入荷。メーカー担当者に返品をお願いしてみたが、一度出荷したものは戻せないとの返答。担当者からは「半額セールのチラシを作りますので、売れるだけ売って、余ったものはまた考えましょう」と提案された。

そこで店主、「これは、あの事例を参考にするときだ」とひらめいた。「あの事例」とは、本コラムでも掲載したことがある、このような誤発注による大量入荷の際、実践会員がよく打つ手のこと。自店もそれを実践してみよう、と思ったのである。

彼が行ったのは、顧客へチラシを配布し、購入を促すことだ。といっても、メーカー担当者が言うような半額セールのようなものではない。販売価格は定価だ。このチラシの特徴は、見出しに大きくこう書かれていることだ。「助けてください!」。そして、「私は年末に大きなミスをしてしまいました」と続くこのチラシは、お客さんに誤発注してしまった商品を買っていただくよう、応援をお願いするものだ。

そんな手前勝手なお願いをお客さんが聞くのか? と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれない。しかし配布するいなや、翌日から牛乳ボックスには注文書があふれた。「心配で電話した!」と、電話で注文をする人も多く、なかには「大丈夫!? 大変でしょう、60食分の10箱、買わせてもらうね」と言う方まで現れた。結果、291軒から注文をいただき、販売総数はそもそもの誤発注分を大きく超え、3528袋にもなったのだった。後日、メーカーの営業担当者に「3500袋注文が入って在庫は無事になくなったので、大丈夫でした」と伝えると、その方はポカーンとしていたそうだが、無理もない。

このようなことは普通起こらない。しかし、当会の会員の現場では常に起こる。その背景には共通項があり、同店が日頃から行っていることに、それを見ることができる。それはどんなことか? この続きは次回に。

小阪 裕司
山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。