Home コラム 一石 シアトル人気 〜一石〜

シアトル人気 〜一石〜

by 佐々木 志峰

フロリダ州タンパ。メキシコ湾のビーチ沿いに広がる街へ向かうには、目の前のタンパ湾に架かる大橋を通っていく。「水」が入り込みながら形成される都市圏としては、サンフランシスコやシアトルと似ているだろうか。

ライドシェアを利用し、その大橋のひとつを渡った時のこと。広がる車線のさらに横の海上で、工事が延々と進められている。運転手によると、道路の拡張工事だという。フロリダ州は人口増が顕著で、タンパ地域も例外ではなく、今後の交通事情に備えた「投資」だそうだ。

所用を終えた帰り道で同じく利用したライドシェア。どこから来たのかと聞かれ、シアトルと言えば非常に興味を示した様子。チャンスがあれば「住んでみたい」そうで、「ITの街」というイメージを強く持っていた。

遠く離れたタンパでの数日前。シアトル・タイムズ紙電子版がハーバード大学と国勢調査の研究で、1984年から92年の間に生まれた、いわゆる「ミレニアル世代」に該当する人の移住パターンを紹介していた。16歳と26歳時点それぞれの生活拠点から割り出したもので、ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントンDC、アトランタに続き、シアトルは5番目に多い移住先となっている。

年齢を考えると移住時期は2010年から18年となる。シアトルでこの期間に26歳を迎えた人口は約48万人だそうで、このうち16歳の時に同地で生活をしていたのは約30万人。単純計算では、移住者数はこの世代だけで18万人となる。

同研究における「シアトル地域」は北はスカジット、南はルイス郡までと広大なため、右記のデータとは違いが出るかもしれないが、この世代の移住者たちが当地の急速な成長を後押ししたことに疑いはないだろう。シアトルに興味を見せたタンパでの運転手も年齢は30前後のようだった。

移住者の人種層で見れば、白人、アジア系が多いという。出身地はロサンゼルスが最も多い。逆にシアトルから移住していく街で最も多いのはロサンゼルスとなるそうだ。新型コロナウイルスの時代を経て、このダイナミックな人の動きはどう変わっていくのだろうか。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。