Home 食・旅・カルチャー 地球からの贈りもの~宝石物語~ 揺れる英国王室

揺れる英国王室

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2020年が明けてまだ間もないが、すでに色々な事件があった。英国は、いよいよ本当にEUから離脱をしてしまった。さらには、年明け早々にハリー王子と妻メーガン妃の騒動である。エリザベス2世も気の休まる時がないだろう。

英国の王室で国民に最も人気がある人物は、エリザベス2世だそうだ。その次が、ハリー王子。ハリー王子とメーガン妃の声明をインスタグラムを通じて知ったのが、七草粥で胃腸を休ませた翌日。報道で読む限りでは、他の王室メンバーも、何も知らされてなかったようだ。話し合いは始まっていたが、まだ初期段階で、これから話し合って詳細を決めていく段階だったそう。ハリー王子の思惑としては、シニアメンバーを退くだけで、それなりの待遇は残せると思っていたかもしれない。しかし結果は、ロイヤル・ハイネスのタイトルも、軍のタイトルも失うことになった。王室として公務にも出られない。以前からハリー王子が示唆していた、税金に頼らないで自活していくというのに加え、アーチー王子が生まれた時の自宅の改装費3億円程も返金することになった。このあたりの判断は、エリザベス2世が在位60年以上に渡って国民の信頼を維持し続けている理由だろう。可愛い孫とはいえ、ハリー王子の処遇についてケジメをつけて、君主として国民に対してフェアな判断をしたのだと思う。

ハリー王子の決断には、妻メーガン妃の悪影響などともささやかれているが、私個人としてはそう思わない。私の長女が生まれた月に故ダイアナ妃が亡くなった。乳飲み子を抱えてずっとテレビにくぎ付けだった。ウィリアム王子と並んで歩く、まだ背も小さかった13歳の少年が目に焼き付いている。妻が母親と同じ目に合うことがないように、どうすべきか考えた上の苦渋の決断だったように思うのだ。

英国王室にとって、離婚歴のあるアメリカ人女性はジンクスになってしまうかもしれない。1937年にエドワード8世が王位を退いたのも、二度の離婚歴を持つアメリカ人女性ウォリス・シンプソンと結婚するためだった。当初、エドワード8世も王位を維持したまま結婚する方法として貴賤結婚の形態を模索しており、当時の英首相にも相談していたようだ。

エドワード8世がウォリスに送った婚約指輪は19.77カラットのカルティエ製のエメラルド。枠はシンプルなプラチナ台で、そこには「we are ours now 27×36」と刻まれていた。プロポーズした日であり、ウォリスの二度目の夫との離婚が成立した日の1936年10月27日である。この時はまだ、王位を捨てなくてはならないとは思っていなかっただろう。結局、貴賤結婚を利用する目論見は、当時のイギリス連邦の英国、カナダ、オーストラリア、南アフリカの首相らに反対され、結婚なら退位という事になった。そして、弟のジョージ6世が王位についた。ジョージ6世の娘がエリザベス2世である。考えてみると、エドワード8世が王位を捨てなければ、エリザベスが女王にならなかった可能性は高い。エドワード8世が賢かったのは、弟のジョージ6世にウィンザー卿というタイトルを作らせ、退位したあとの自分のステイタスを守った。そして、ウォリスに伝説となる数々のジュエリーを贈った。結婚20周年の記念には、ウォリスはオリジナルの制作者であるカルティエに婚約指輪のリメイクを依頼。ゴールド台で、エメラルドの周りに小さな丸いダイヤモンドが配されたものにした。

チャールズ皇太子はハリー王子への経済的援助をするそうだ。1972年にウィンザー卿が亡くなってからは、エリザべス2世がウォリスへの経済援助をしていたという。複雑で奥が深い英国王室だ。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。