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AAPIヘリテージ月間 〜一石

 5月はアジア太平洋系(AAPI)ヘリテージ月間。

 米国建国200周年を迎える1970年代に制定の機運が高まり、1977年にフランク・ホートン連邦下院議員が5月最初の10日を記念週間とする議案を提出したのが発端という。その後、ダニエル・イノウエ連邦上院議員からも同様の発案が出された。

 これらの議案は可決を見なかったが、翌年に再度提案され、1979年5月4日から一週間を「アジア太平洋系米国人ヘリテージ週間」とすることが決まった。毎年宣言が行われてきたが、1990年に一週間から一カ月に期間を延長。1992年に毎年の行事となることが認められた。

 5月が選ばれた理由は1843年5月7日にジョン万次郎が米国に到着したことや、中国系労働者が多く携わって1869年5月10日に完成した大陸横断鉄道の記念日があるためという。

 この40年あまり祝われてきたAAPIのヘリテージだが、偏見や排斥の動きも忘れてはいけない。100年ほど前を見れば、米国は移民排斥へ向けて各州、連邦議会の動きが加速。ワシントン州では土地所有権、借地権を認めない反日的な土地法が1921年に制定され、これは1966年の撤廃まで続いた。

 この一年は新型コロナウイルスの影響で社会様相が変わった。非営利団体Stop AAPI Hateによると、2020年3月から2021年3月31日の間に同団体へ報告されたヘイトクライム(憎悪犯罪)は6603件。深刻化が報じられるようになった最後の1カ月では、2808件の急増があったという。

 バイデン大統領は20日、AAPI住民に向けられた増補犯罪への対策を講じた「新型コロナウイルス・ヘイトクライム法」を成立させた。日系連邦議員のメイジー・ヒロノ上院議員らが中心となって起草された法案は民主、共和党の超党派の賛成を得た。バイデン大統領は署名後、「沈黙は共犯。共謀はできない。声を上げ、行動しなければならない」、「我々は憎しみや偏見を止めることを公約する」と述べた。

 現在、そして今後、米国が進むべき指針を示してくれた行動を歓迎したい。

(佐々木 志峰)