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地球からの贈り物 ~宝石物語 80~

今年は日本とイタリアの国交150周年の記念の年。個人的には、イタリア人チェリストとピアニストの日本人妻と知り合い、イタリアが急に身近になった。今回は、イタリアンジュエリーに迫ろう。

まずイタリアンジュエリーと言えば、そう、ブルガリである。リチャード・バートンが冗談交じりに、当時の妻であったエリザベス(テイラー)が最初に覚えたイタリア語はブルガリだと語った話は有名である。

これぞブルガリという特徴的なデザインがいくつもあり、スピガ、トゥボカス、パレンテシ、そしてセルペンティなど。共通するのは、小さなパーツを繋げた立体的な造り、そしてフレキシブルということだろうか。身に着ける指や手首に程よくフィットする柔軟さ。ボールドなデザインやボリュームがどちらかというと男性的なのだが、フレキシブルな柔軟さが女性らしい官能性を生み出している。

そしてブルガリと言えば、色石のマジック。5大貴石と呼ばれる(多少のバリエーションがあるのだが)、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、真珠(アレキサンドライトとか翡翠という人もいる)。これらの宝石の価値は、何世紀にも渡って珍重されてきた。しかしブルガリの快挙といえば、それまでそれなりの扱いしか受けなかった、半貴石のジュエリーの地位を上げた事だろう。

例えば、黄緑のペリドットと濃い紫のアメシスト。それにペルシャブルーと呼ばれる水色の最高品質のターコイズに桜色の珊瑚。ターコイズというと、ネイティブアメリカンのシルバージュエリーのような、黒い模様が入ったものを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし最高品質のターコイズは、不純物のないキレイな水色。「ペルシャブルー」と呼ばれるように、中東やその近辺ではペルシャ時代より珍重されてきた。しかしその価値を世界規模で認めさせたのはブルガリの功績と言っていいのではないか。

他にもネックレスやブレスレットに連なる宝石の色が全部違うなど、遊び心に溢れつつも、おもちゃのように見えないのは、やはり一流メゾンの技術だろう。

いかにも1960 年代というような、かなりのボリュームのゴールドに大粒の色石を配したものもあるし、小さなダイヤモンドが敷き詰められた中に配された物もある。ゼロがいくつも並ぶような値段なのに、子供のおもちゃの様な遊び心と大胆さ、そのある種の矛盾が更に魅力を加えている。

そして特徴は色遣いの大胆さだけではなく、それらの色石のカッティング方法だ。通常のラウンドブリリアントと言われる表面が円のダイヤモンドは58 (または57 )の面(ファセット)により、最高の輝きを放つ。ダイヤモンドの他の形にしても、他の色石にしても、ほとんどは面を作ることによって、光を石の内部で反射させ、それを最大限に石の外に放出することで、輝きを生もうと試みる。

しかし、この面を施さない宝石の研磨の方法がある。それが、カボションと呼ばれるカットだ。面がなくツルっとしている。水晶珠を思い浮かべてもらえればいいだろう。ただジュエリーにする場合、珠の状態ではなく、一部が指輪やイヤリングの金属の枠にはまるように平らになっていたりする。面がなくて光の反射がないと、輝きを重視する宝石にはそぐわないように思うかもしれない。しかしカボションカットは色が強調され、艶やかな表面が美味しそうというか、愛嬌があるというか。ゴージャスに輝く宝石とはまた違った味わいがあるのだ。

「アート・オブ・ブルガリ~130年にわたるイタリアの美の至宝」という展覧会が、東京国立博物館で昨年末に開催され、運よく見ることができた。チケットの写真は、エリザベス・テイラーが所有していた大粒のカボションカットカボションの中でもシュガーローフと呼ばれるカットのサファイアのペンダント。ジオメトリックが特徴のアールデコ風のデザイン。次回は、ブルガリ展とエリザベス・テイラーの遺品などに迫ってみよう。

(倫子)

今年は日本とイタリアの国交150周年の記念の年。個人的には、イタリア人チェリストとピアニストの日本人妻と知り合い、イタリアが急に身近になった。今回は、イタリアンジュエリーに迫ろう。

80年代のアメリカに憧れを抱き、18歳で渡米。読んだエッセイに感銘を受け、宝石鑑定士の資格を取得。訳あって帰国し、現在は宝石(鉱物)の知識を生かし半導体や燃料電池などの翻訳・通訳を生業としている。