新元号が発表されたが、調査では6割とも8割とも言われる世間の好印象とは裏腹に、私の周りの反応は今ひとつ。「和」という字は間違いなくポジティブな印象を受けるが、「令」はちょっと堅いというか冷たいというか。皆さんの感想は如何に?
万葉集から引用されたという政府からの発表だが、どうやら万葉集では既に中国の文献から引用されていたという説も強い。そもそも漢字自体だって日本古来の物とは言えないのだから、今更その辺を議論する必要は無いようにも思うのだが。それは良しとして、万葉集は面白い。私は小学校5年生ぐらいから中学時代は何しろ歴史が大好きだった。枕草子や徒然草は現代語訳ではあったが何度も読んだし、万葉集も読んだ。源氏物語も中学生の乙女としては外せない。私が歴史にはまったきっかけは、小学校5年生の時に読んだ小学館マンガ「少年少女日本の歴史第5巻」である。端から端まで全て覚えるぐらい読み、今でも表紙がまざまざと目に浮かぶ程である。その本がきっかけで、平安時代から始まり過去に遡り平城京や奈良時代、そしてその後は源平や鎌倉・室町時代が好きだった。
そもそもなぜそのマンガ一冊が歴史にはまるきっかけとなったのか。第5巻は「貴族のさかえ」というサブタイトルで、藤原道長の栄華を中心とした貴族の話である。清少納言や紫式部の時代でもあり、十二単などの貴族文化の描写がたくさんでてくる。そして決定打は藤原道長の妻、藤原倫子である。私の名前は倫子とかいてみちこと読む。私は小学校5年まで倫子という名の人にあった事が無く、最初に自分以外の名前を見たのは藤原倫子(りんしと読む)が初めてだったのだ。千年ほど前の貴族文化で栄華を極めた藤原道長の妻。長女の障子を始めとする4人の娘は全て天皇の妻になった。中学生の思春期の乙女には名前が同じというだけで十分で、私は歴史にはまってしまったのだ。
万葉集は何が面白いかというと、防人の歌とか、貴族でも何でもない学の無い普通の人の歌も入っているところである。九州を守る防人が、「早く故郷に帰りたい」とぼやいている歌だったりするのだ。枕草子や徒然草も同様の面白さがある。平安時代のやんごとなきお姫様もくせ毛で悩んでいたり、徒然草の吉田兼好も日常の出来事を愚痴ったりしている。人というのは千年ぐらい前も同じような事で悩んだりぼやいたりという事が面白い。
歴史熱は中学生の頃がピークだったが、最近日本的なものとして「紋」に少しはまっている。最初に紋をつけたのは藤原実季(さねすえ)と言われていて、宮殿に出入りする際に自分だと分かるように牛車に付けたのが文献で記録された最古とされている。実季がつけたのは、勾玉に似た「巴紋」だそうだ。よく太鼓などにも使われているので、最も馴染みのある紋の一つといえるだろう。紋・家紋というものは、調べれば調べる程に奥が深い。徳川の葵の紋や、皇室の菊の紋などが有名だが、驚くほど多種多様な紋があり、賟千以上とか二万ぐらいの種類があると言われている。紋の凄いところは、あれだけの複雑な模様を、細い筆をつかったコンパスと定規でデザインしてしまうところである。
NHKの番組で『デザインあ』というものがある。身の回りにあるものをデザインという観点から興味深く解説するような番組なのだが、この番組の中に「もん」というコーナーがある。「最初は円」というセリフで始まるこのコーナー。複雑な紋ですら、シンプルな道具二つで描かれていく様子を解説しながら映すのである。複雑なデザインが描かれるのにはもちろん感動するが、シンプルなものでも実はかなり細かいプロセスがあったりすることに驚いたりする。そんな日本の技術を見直すきっかけになった紋や新元号の元である万葉集で、遥遠い時代に思いを馳せるのも悪くないと思うのだ。