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世界のMifune

少し前になるが、ロサンゼルスのハリウッドで、俳優の三船敏郎さんが殿堂入りしたとのニュースがあった。11月14日に三船さんの名前を刻んだ星形プレートをハリウッドの歩道に飾る式典開かれた。11月9日付の羅府新報によると、日系では、早川雪州、マコ岩松、ゴジラに続き4人目という。

黒澤明監督作品での活躍が最も知られ、1940年代後半から6年代にかけて15作品ほどに出している。『羅生門』、『用心棒』、『赤ひげ』などの主演で国際的な評価を決定づけ、『スターウォーズ』シリーズへの出演依頼など、「サムライ」の佇まいは海外映画業界へ多大な影響を与えたという。

三船さんは第二次世界大戦で特攻隊地に配属されており、特攻兵の教育、特攻の送り出し役を担ったという。家族の仕事だった写真の技術を重宝され、特攻兵の遺影撮影も任されたという。

「死」を眼前にした軍役を何年も担い、その経験が演技の内なる部分に存分に発揮されたのか。第二次世界大戦後間もなくの映画界での活躍は、日本に大きな希望をもたらした。旧日本軍の真珠湾攻撃から75年を迎え、三船さん死去から来年で20年という。本人の活躍を見ていない筆者だが、三船さんの演技、スクリーンでの表情は強烈な記憶として残り続けている。

当地には1980年代まで日系映画館があり、国際、東洋の2つの映画館が日本映画を上映し、多くの日系人を楽しませてきた。彼らにとって三船さんはスクリーン上では身近な存在だったに違いない。シアトル桜祭・日本文化祭にも一度ゲスト参加。当時の写真を本紙桜祭り号でも紹介している。

日系映画監督として活躍するスティーブン・オカザキ監督は昨年、三船さんを描いたドキュメンタリー映画『Mifune: The LastSamurai』を制作。今回の殿堂入りを受け、当地でも1月6日からユニバーシティー・ディストリクトにあるGrandIlluision Cinema で上映される。

13日に全米上映される日系俳優ジョージ・タケイさんの劇『Allegiance』と比べ、寂しい感は否めないが、本紙英語面で関連記事を書いたデビッド・ヤマグチさんも今後、他の劇場でも上映されることを期待している。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。