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遠いシアトル

 シアトルが遠い。

 広大な北米にあって、シアトルはアラスカを除いて米国本土の北西端にあることは地理上、理解している。だが、実際に他の主要都市との距離をここまで感じたのは初めてだった。

 仕事の関係で米中西部に滞在し、ある州の小都市から大きなハブ空港を経由してシアトルに戻る日のこと。経由先が悪天候に見舞われ飛行機の乗り入れが止まった。さんざん待たされ、結局到着はシアトル行きの飛行機と入れ違いという事態に。経由地のスケジュールは翌日まで混乱が続くと聞かされ、最後は帰り便を変更して現地に延泊することになった。

 翌日、今度は変更した帰り便の経由先が悪天候で出発が遅れた。前日の不安もあり、他の空港を経由する別便を探ったが、乗り入れ先はどこも悪天候とのこと。空港にある気象マップを見ると、中西部の北から南部まで雷雨の前線が走っている。夏の異常気象なのか、まったく予測が立たない状況。運を天に任せて待ち、出発地、そして経由地でさんざん待たされ、フラフラの帰宅は深夜のことだった。

 仕事の関係者からシアトルは遠いとよく聞いてきたが、機内で地図を見て改めてその特異性が分かる。米国を半分に割ると右半分は東海岸まで緑色が広がりほぼ平坦。左はロッキー山脈の白色、砂漠の黄色、そしてノースウエストなどの緑色と様々な地形に富んでいる。

 東から見ればシアトルとの距離感は明らか。ロッキー山脈のさらに向こうの「僻地」だろうか。育まれる文化も異質だろう。政治、経済の中心地とかけ離れたこの地でボーイング、マイクロソフト、アマゾン、スターバックスなど名だたる大企業が生まれた土壌はどういうものだろうか。日系社会も、他に比べ、そのユニークさについてよく耳にした。

 土地各々の性格の違いを感じる中で、ノースウエストの地に心地よさを感じ居を置いている。何しろ米国の広さを実感すればするほど、日本からの近さも感じる。夏の休暇シーズンで天候に悩まされることない恵まれた土地に戻り、さわやかな好天に安心感を募らせる自分がいた。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。