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マイノリティー市長へ

 五輪、パラリンピックの大会を終えた日本では、菅義偉首相が総裁選に不出馬を表明し退陣が決まった。候補者が乱立する混戦模様が報じられている今月末の総裁選で新たなリーダーが誕生する。日系社会と関係の深い河野太郎氏も6日段階で総裁選に出馬の意向を示しているという。

 米国は大統領選挙の翌年で全国的な選挙の盛り上がりはないが、各自治体では重要な戦いが待ち受ける。ジェニー・ダーカン市長の再選不出馬を受け、シアトル市も今後4年を問う市長選が行われる。8月の予備選挙で勝ち残ったのは市政経験のあるブルース・ハレル氏とロレーナ・ゴンザレス氏の2人。前市議会議長と現議長の争いになる。

 ともにマイノリティー。日系のハレル氏は市議3期の間に議会議長や暫定市長を歴任。2013年の市長選にも出馬した。地元出身でコミュニティーとのつながりも深い。ゴンザレス氏は州南部のプロッサー出身で移民労働者の両親を持つ。2015年にラテン系女性として初めてシアトル市議に選ばれ、プログレッシブな政治志向があると伝えられている。予備選挙ではハレル氏が34%、ゴンザレス氏が32%の票を獲得した。

 本選挙に向けた活動の中で、数日前の地元テレビではホームレス問題について地元住民とハレル氏が議論を重ねる様子が映し出されていた。解決の道をなかなか見いだせず、一般生活にも影響を及ぼしている重要なテーマの一つとなるだろう。最近でも私用で訪れた場所の隣の通りがホームレスの集落となっていたことに驚かされたばかりだった。

 本紙の特質上、日系のハレル氏を紙面で扱う機会は筆者が編集部にいた当時から多かった。同氏は2016年に日本外務省が主催する日系人リーダー訪日プログラムに参加。同プログラムを運営する米日カウンシルによると、前述の河野氏とも面会しているようだ。

 地元政治で日系関係者が大きな注目を集めるのは久々ではないだろうか。どのような結果を迎えるか注目したい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。