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震撼の新年

ワシントンDCの連邦議会で先週に起きた騒動の衝撃が冷めることなく尾を引いている。トランプ政権の最後がこのような形になるとは想像に及ばなかった。

 報道によると、連邦捜査局(FBI)は各州の州議会場での騒動発生を警戒しているという。ワシントン州の州都オリンピアでは、今週に始まった議会の安全対策として建物周辺にフェンスが設置された。新型コロナウイルスの懸念もあり、各議員は105日の会議期間はリモートで参加することが認められた。

 年明けのこの時期は1月にアジア太平洋系のコミュニティー(AAPI)政治運動となるAPI Legislative Day、2月にはボブ・ハセガワ州上院議員、シャロン・富子・サントス州下院議員らが主導する形で第2次世界大戦時の日系人強制退去に関するデイ・オブ・リメンブランスが行われてきた。といった行事が恒例だった。コミュニティーのロビー活動の場にもなった。過去と状況は異なるとはいえ、荘厳な議会場の姿に胸が痛んだ。

 1月20日に発足する新連邦政府は新型コロナウイルスや分断された米国社会への対応に向かう。山積みの課題を前に、バイデン政権の閣僚人事面に関してはAAPIの団体、関係者から懸念の声が挙がった。

 新政権は人種を含め、最も多様性ある政府となるよう期待されている。インド出身の母親を持つカマラ・ハリス次期副大統領を筆頭に、AAPIからは準主要閣僚クラスで指名を受けた。だが、主要閣僚の15人には名前が挙がらなかった。日系市民協会(JACL)は容認できないとの声明を8日に発した。

 クリントン政権でノーマン・ミネタ氏が商務長官に任命されて以来、各政権はAAPI関係者を閣僚に加えてきた。ミネタ氏はその後、ジョージ・W・ブッシュ政権で運輸長官となり、2つの政権で閣僚を務める。トランプ政権では首都での騒動を受けて辞任を発表したイレイン・チャオ前運輸長官がいた。

 震撼をもって始まった2021年。パンデミックの状況から見ても、急な好転は望めない。米国社会の向かう方向を見定めながら、ゆっくりと癒しを待つ新年としたい。

         (佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。