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フルサークル モーメント ー後編ー 〜地球からの贈りもの〜宝石物語

フルサークル モーメント ー後編ー

By 金子倫子

前回の続きで、今回は指輪探しの旅の結末まで。

今どきのネット販売のサイトでは、検索を保存しておくと、新入荷商品があれば自動的に通知を送ってくれる。というわけで、ポメラートの全アイテムを対象に通知を設定した。それから程なくしてガーネットの大きな石が付いた中古の約35万円の指輪が入荷した。サイズは私の薬指よりも0.5サイズ小さく、そしてガーネットの深い茶褐色。

しばらく前にダイヤモンドとパール以外は買わない、と勝手にマイルールを作った私としては、石物は避けたい。現行モデルではないので、石の大きさの詳細は分からないが、比較としてポメラートのヌードリングの石も10カラット弱のようなので、このガーネットもそれ位はありそうだ。そうこう迷っているうちに、何と数日でこの指輪は売り切れてしまった。そして1週間ほどが経ち、今度は黄色い石で、サイズが薬指より2サイズ大きい、30万弱の指輪が現れた。これなら薬指には大きくても、中指にはいけそうだ。黄色い石ならシトリン(黄水晶)とふみ、11月生まれの私には誕生石でもあるなどと言い訳をし、マイルールはあっさりくつがえった。

ただ、私の中では30万円は一つの閾値しきいちで、この額以上ならダイヤモンドを買った方が良いと思う基準値なのだ。今でこそ金が高いので感覚が麻痺しているが、30万はそれなりの額だ。この指輪は15グラム強とかなり重厚感もあり、金相場とチェーン技術を考えれば、「これは買い!」なのだが、まだ少し迷う。

その時、何かのお告げの如く、別のショッピングサイトの画像がポップアップで出た。どう見ても同じ指輪だが、25万円弱とある。そのサイトに入って詳しく見てみると、販売元は同じ大手中古品販売業者になっている。販売元は同じでも、どのサイトを介するかで売価が異なるという事だ。目から鱗の状況に、もしや別のサイトならもっと安いかも? と今度は販売業者のサイトを直接見てみた。そうしたら、なんとさらに値引きされ20万強。にわかに信じがたいが、とりあえず販売業者へ電話をし、取り置きを依頼した。担当者からは、石に擦れ等があるので購入前に確認した方が良いと提案された。そして翌日、店舗での直接対面。

トレーに乗せられたその指輪を見た瞬間、「これだ!」と思った。石の擦れを確認する必要は無かった。

欲しいと思ってから、購入まで2、3週間位だったろうか。集中力とエネルギーと。それがこの指輪を引き寄せたような気がするほど、私にとって久しぶりの運命の出会いだった。

そして、この指輪で1つのフルサークルモーメントを体験する。私がジュエリーという物に興味を持ったのは、「裸の時にも寄り添う、体の一部のようなダイヤモンド」という内容の光野みつの もも氏のエッセイを読んだ事がきっかけ。光野氏は夫の転勤に伴い、雑誌の編集者を退職し、ポメラートの発祥地であるイタリア・ミラノに数年在住した。イタリア女性とジュエリーとのあり方が、エッセイにも多々登場する。そして、今でも敬愛するエルサ・ペレッティ氏がデザインしたティファニー社のダイヤモンド・バイ・ザ・ヤードのコレクションを見た時、爪の無いダイヤモンドは正に「体の一部のようなダイヤモンド」、という概念の具現化だと思った。ペレッティ氏はイタリア・ローマ出身で、オープンハートなどの地金の曲線が魅力的な作品を多くデザインし、私もチャームブレスレットを所有している。そして、今回私がどうしても欲しいと渇望する程に衝撃を受けた、ポメラートのチェーンジュエリーの魅力が全開した展示会での80年代の官能的な広告写真。これを撮った写真家のヘルムート・ニュートン氏とペレッティ氏は一時期恋人同士だったと言われている。ペレッティのデザインにある官能的な曲線は、ニュートンが写す被写体の曲線を表しているようでもある。イタリアとジュエリーと官能と。

この指輪は装飾品と言うより、私の哲学や感性がそのまま具象化した様。中指ではなく人差し指にピッタリのこの指輪、私のこれからの人生を示してくれるような気がしてならない。