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望まれない銃社会〜一石

By 佐々木 志峰

一気に夏模様と化したシアトル。近場のビーチも賑わいを見せていることだろう。ダウンタウンからエリオット・ベイを挟んだ、ウエストシアトルにあるアルカイ・ビーチもそうに違いない。

そんな場所で13日に銃撃事件があり、犠牲者が出たとのニュースがあった。シアトル警察署のオンライン事件記録簿を見ると、その一件を含め、14日からさかのぼって1週間の間に4件の銃撃事件が発生している。

そのアルカイでの事件から1週間前。犠牲者8人を出す痛ましい乱射事件がテキサス州ダラス近郊で起きた。週末のショッピングモール。夕方前でまだ賑わいを見せているころだったようだ。

筆者がその近くに出張で向かったのは、数日後のことだった。宿泊先は車で10分もかからない場所にあった。早く現地入りした関係者の中には、事件現場のすぐ近くに宿泊し、発生数十分前にその場を実際に歩いていた者もいたと耳にした。

1週間後、事件現場を訪れた。モール南側の入口に犠牲者を追悼する場所が設けられ、大勢の人が手を取り合い、祈りを捧げていた。夕日が差し込む時間帯。悲しみに包まれる光景に胸が締め付けられた。

その翌日は「母の日」。車で20分も離れていない仕事現場は各所にピンク色の装飾が施され、厳重な警備のもと大勢の来訪者で賑わった。記念の一日を祝い、大きな花飾りの前でギフトを手に写真に収まる人々の笑顔が見られた。

悲しみともに手を取り合っていた人々の姿が頭に浮かぶ。乱射事件では家族、母親を失った子どももいたと伝わる。一瞬で、そして無差別に命を奪う蛮行。ふたつの異なる光景を目にし、やるせない思いと憤りがわいてきた。

報道によると、非営利団体ガン・バイオレンス・アーカイブの統計として、4人以上が撃たれる銃撃事件は今年に入って米国内で200件を超えるという。学校、教会、映画館、ショッピングモール――。「安全第一」、「身の回りの安全」と言われるが、自ら意識してもどうしようもないところまできていると実感する。

望まれない銃社会の現状。どのような形にしても、改善、先へ進む迅速な一手が望まれる。