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移り変わり

シアトル北のエベレットを中心に日米のビジネス、文化の橋渡し役を担ってきた日本ビジネスインスティチュート(NBI)文化資料センターの真由美スミスさんが、先月をもって引退したとの連絡を受けた。
ボーイング社が近くにある関係で日本企業が次々と進出していた1980年代、エベレット・コミュニティー・カレッジでも日米相互理解を図るプログラムが立ちあがった。発足にあたり資金集めなど様々な労苦があっただろうが、カレッジ敷地内には日本庭園(西山庭園)やお茶室が入った立派な和風施設が建った。1987年建設だから30年になる。あるイベント取材で一緒になった日本総領事が、シアトルという中心地から離れた郊外にある文化施設の充実ぶりに驚いていたことを思い出す。
地元コミュニティーのネットワークも図られ、NBIからは定期的にニュースレターもあり、活動の様子は伝わってきていた。日本を学ぶ場としてだけでなく、日系社会や地域に事務所を置く日本企業との橋渡しにもなったようだ。イベントも頻繁にあり、ユニークなものとして、現地カレッジに席を置き、「成人式」に出席できない学生へ「門出」の機会を設けたりもしていた。
スミスさんは引退後もNBI顧問として「日米の架け橋の一助」となる旨をEメールに記す。引退と言っても茶道など日本文化普及の活動に携わり、コミュニティーとの関係はこれからも続くのだろう。
筆者が本紙に携わるにようになったのは、地元コミュニティーで三世がいよいよリーダーシップを担っていくという時だった。それから約10年経ち、今は戦後移民の「新一世」でも新たなリーダーが立ち、次世代への流れを作ろうとしている。
新しく立ちあがったジャパンフェア。先の女子バスケットボール「シアトル・ストーム」のジャパンナイトでは350人以上が集まった。同様にエベレット地域でも新たなリーダーシップが自然と立ちあがってくるだろう。成熟したピュージェット湾に広がる日系コミュニティーの健全さ、力強さと思いたい。
(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。