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松浪千壽の和楽器による幻想の世界 11月1日シアトル公演

取材・文:ハントシンガー典子

NHK連続テレビ小説で指導・監修を務めるなど、邦楽の第一線で活躍する地歌・箏曲(そうきょく)・上方唄の松浪流家元、松浪千壽さん。2016年のポートランド公演に引き続き、2017年はシアトルでも演奏会を開催する。
昨年8月にポートランドで行われたコンサートでは、オリジナル曲から宮城道雄の代表曲「春の海」などのクラシックまで多彩なプログラムを披露し、大好評を博した。今年は、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか、松浪千壽さんに見どころや自身の活動について話を聞いた。

今回のパフォーマンスで注目して欲しいところは?

プログラム全体を通して、楽しんでもらえるような構成にしたつもりです。特に、箏四面、十七絃と尺八による「雪月花によせて」は迫力の演奏。オリジナル曲「風にきけ」ではソロの箏の限界を追求したテクニックにご注目ください。尺八と十七絃の二重奏で美しいメロディーを堪能できる「哀歌」も目玉のひとつです。

プログラムには、どんなメッセージが込められていますか?

楽しく華やかな舞台を通して日本の文化への理解を深め、親しみを持ってもらえたらうれしいです。昨年の公演ではプログラムの最後に「会津・出羽・江差のエスプリ」を演奏し、3.11の東日本大震災の際に「トモダチ作戦」を実行して速やかに日本の支援をしてくれたアメリカへの感謝の意を込めました。今年も、同様のメッセージをプログラムに入れています。今回のコンサートでは参加者は全て自費でアメリカに来て、無料で演奏をします。主催も非営利組織(NPO)のJapanese Coolです。出た収益は、今度は私たちが微力ですが支援できるよう、テキサス州ヒューストン周辺で起こった大規模な洪水災害の被害者に寄付したいと思っています。

昨年のポートランド公演を踏まえて、シアトル公演でやってみたい試みは?

シアトルは異国情緒を感じつつ、なぜか懐かしさを醸し出す素敵な街。どこか神戸のイメージと重なり、親しみがあって、日本人に優しい雰囲気も感じました。昨年のポートランド公演後に届いた、皆さまからの感動のメッセージが忘れられません。そのような感動をまた、日本の文化を通じて一緒に楽しみたいと思っています。昨年は手拍子で参加してもらいましたが、完璧なリズム感だったので、今年はそれに加えてコーラスなども一緒にしたいですね。

公演に参加する特別ゲストの菅原久仁義さん、一門の方々について紹介してください。

尺八奏者の菅原さんは海外公演の経験が多数あり、日本ではコンテストの審査員も務めています。これまで、合奏の勉強や仕事で何度も顔を合わせています。一門からはベテランから若手まで8人がアメリカ公演に来てくれますが、その中にはプロで仕事をしている者もいます。チームワークは最高です。

朝ドラでは「あさが来た」に続き、10月からの新番組「わろてんか」でも活躍中ですね。

「わろてんか」の箏、三味線の指導、芸者役での出演、撮影の監修で8・9月は忙しくしていました。子役の新井美羽ちゃんが箏の覚えの早かったこと! 「さくら」を弾いて間違えるシーンが、本当に間違えたのかと思うほど芝居が上手でした。三味線を弾く中村ゆりさんは、稽古の3回目くらいでほぼ弾けるようになりましたね。私の出番の日は、朝から晩まで芸者の格好で疲れました。裏話は山ほどありますよ。

シアトル公演はどんなふうに楽しんで欲しいですか?

海外に住む日本人の方はもとより、日本文化に興味を持つアメリカの方に美しい日本の伝統音楽やステージを通して、真の日本文化への興味や理解を深めて欲しいですね。邦楽を聴いたことがある方もない方も、和楽器のファンになってもらえたらうれしいです。お会いできるのを楽しみにしております。

 

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。