Home インタビュー 第3回 ワシントン州アジア...

第3回 ワシントン州アジア太平洋問題委員会

2020年大統領選挙の民主党代表候補だったエリザベス・ウォーレン上院議員のシアトル演説会場で同氏と登壇したトシコさん(写真右)

行政へコミュニティーの声を届けるアドボカシー組織
ワシントン州アジア太平洋問題委員会

ソリダリティーを意味するCAPAAのロゴマーク

ワシントン州が運営するアジア太平洋問題委員会(CAPAA)は、アジア太平洋系州民の地位向上を目的とする州知事アドバイザリー組織。インズリー知事の任命で2018年から事務局長を務めるトシコ・グレース・ハセガワさんに、同委員会の役割や歴史背景などを詳しく説明してもらいました。

公民権運動から誕生した州営組織

CAPAAの前身が誕生したのは、1970年。アジア系アメリカ人の公民権運動が盛り上がる中で、活動家らが当時の州知事に面会を申し出て、独自の委員会を結成したことが始まりだ。1972年から正式な州知事付のアドバイザリー委員会となり、初代事務局長はJACLメンバーでもあったミッチ・ミツユキ・マツダイラ氏が務めた。1995年から現在の名称となり、ワシントン州のアジア太平洋系コミュニティーの声を州政府へ届けたり、重要な州の政策をコミュニティーへ告知したり、コミュニティー住民に政治参加を促したりとアドボカシー活動を行う。「アジア系のコミュニティー団体はさまざまありますが、CAPAAの強みは、州営の組織という点です」と、トシコさん。知事や郡議会の政策決定に直接に働きかけることができるのは、CAPAAならではかもしれない。「コミュニティーを直接サポートすることは少ないですが、草の根レベルの活動をする非営利団体と州政府との橋渡し役を担っています」。アジア系を代表するCAPAAのほかにも、知事アドバイザリー委員会には黒人、ヒスパニック、ネイティブ・アメリカンなど他マイノリティー・グループ向けのものがあり、協力して活動することもあると言う。

多様なアジア太平洋系民族グループ

1970年代前半のシアトルでは戦前からの移民だった日系、中華系、フィリピン系がアジア系を代表していたが、現在ではベトナムやその他の東南アジア出身者、また太平洋諸島出身者も多く、アジア太平洋系(Asian Pacific Islander)と総称される。「州内には42のアジア太平洋系の民族グループがあり、その居住地域は州内全37郡にまたがります」と、トシコさん。地理的にも民族的にも広がる多様な課題への対応は、州からの限られた資金と少ないスタッフで解決する難しさがあるとも話す。

CAPAAでは就職・起業支援も積極的に行う。「アメリカという国で生き延びるには、働いて稼いでいくことが必要不可欠なので、経済的成功を後押しすることはとても大切」と、トシコさん。「マイノリティーの人たちの中にはスモール・ビジネス・オーナーも多いのですが、言語的な壁もあって、起業のプロセス、社会インフラの活用や行政支援の受け方、また公共事業の受託業者としての登録方法などの情報にアクセスしにくいという課題を抱えています。CAPAAでは、そうした情報をマイノリティー経営者へ多言語で届けるようにしています」。州の別組織であるマイノリティー・アンド・ウィメンズ・ビジネス・エンタープライズ(OMWBE)とも協力して、アジア太平洋系の経営者をサポートするイベントを定期的に開催。昨年に州商務局などとも協力して開催したイベントには70名ほどの経営者が集まり、情報の共有や経営者同士のネットワーキングの場になった。

マイノリティー移民の問題は社会全体の問題

現在も、多くのマイノリティー移民や難民を受け入れているワシントン州。トシコさんは移民問題についてどのような考えを持っているのだろうか。「ダイバーシティー(多様化)が進むことで、驚くほどたくさんの成長と革新の機会につながり、州経済に多大な影響を及ぼします。企業の商品やサービスはもちろん、科学や医薬品開発の分野などでも、多様な地域から移住してきた人々が貢献しています」と、移民の受け入れによる経済効果に触れる。一方で、人道的な側面からも、難民の受け入れは必要だと訴える。「自国に身を置くことができない難民を保護して社会全体で寛容に受け入れていくことは、現在の世界情勢からも大事なことです」

多様化していくアジア太平洋系コミュニティーを代表し、今後も地域行政へ声を届けていくCAPAA。「コミュニティーと連帯し、それぞれの歴史、現在の課題を訴え続けることで、行政をより公正にしていくことが大切」と、トシコさんは語る。CAPAAのロゴは、「いろいろなルーツを持つ移民が海を渡り、ひとつの岸に集まって、同じ方向の波を作る」イメージがソリダリティー(連帯)を表している。歴史を乗り越えて、新たな社会を切り開いていく力強さを感じさせる。

トシコ・グレース・ハセガワ(Toshiko Grace Hasegawa)■シアトルのビーコンヒルで生まれ育つ。横浜からシアトルに移住してきた曽祖父を持つ日系4世。シアトル大学大学院で刑事裁判学を学んだ後、キング郡の裁判決定監視局に勤務。2016年からCAPAAスタッフとなり、2018年から現職。

Washington State Commission on Asian Pacific American Affairs (CAPAA)
capaa@capaa.wa.gov https://capaa.wa.gov

取材を終えて

日本で生活する私にとって、CAPAAについて学ぶことはとても新鮮で刺激的だった。活動の背景にある、日系アメリカ人のルーツと歴史を知ることができた。日本でも、移民問題や、マイノリティー住民の意見をどのように取り入れていくかという議論は、身近になってくるかもしれない。「グローバルに考えることが大事」というトシコさんの言葉が印象的だった。


*編集注記:同記事は、姉妹紙「ソイソース」8月28日号にも掲載されています。シリーズ最終回次回は、アジアン・カウンセリング・アンド・リファーラル・サービスについて取り上げます。