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文化の比較

文= 佐々木 志峰

文化交流使の藤間蘭黄氏がシアトルを訪れている。日本舞踊を習う人々への指導、そして年齢を問わず幅広い世代へのワークショップや一般向け公演を通じて、伝統文化の普及に努める。
今回の海外滞在は4カ月の長期に及び、訪問国は10カ国になる。米国はハワイ、シアトル、ニューヨークになるという。海外での公演やワークショップはすでに数多く経験しており、ハワイで
は日系社会と交流。「米国の日系人のアイデンティティーのあり方を考えさせられました」と語る。日本の伝統芸能を見たいという強い興味を日系社会からも感じた。「日系人のDNAを思い起こさせ
る何か」があるのではないか――。
聞けば日本舞踊も興味深い。手に持つ扇子で様々表現する。山は逆さに持つとよい。形は富士山になる。日本の「山」の象徴だ。さらに風、雪――。手や体を含めれば、さらに場面を広く捉えること
が可能となる。落語もそうだが、長い伝統文化の中で作られてきたクリエイティビティに驚かされる。
だが海外で面白いのはこうした「日本の常識」が通用しない部分という。例えば山であれば、富士山のような独立峰でなく、連なった連峰しかイメージできな
い国や地域、人々もいる。
もともと歌舞伎と歴史を共にしてきた日本舞踊。だが言葉そのものは、明治時代になり生まれてきたものという。「ダンス」という英語を和訳する際に「舞い」と「踊り」の2つを結合させ「舞踊」という言葉が作られた。日本伝統の「舞踊」は西洋のダンスと区別する意味で「日本
舞踊」として定着したという。
言葉の由来を含め、日本を離れた地での文化比較。あらゆる文化が入り混じる当地でどのように伝統文化は受け止めてもらえるだろうか

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。