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魅力ある街

最近のことだが、パイクプレース・マーケットへ久々に行ってきた。知人が進めるとあるプロジェクトにかかわる関係で、同所であった小さなミーティングに参加するためだった。

買い物でも散歩でもない。場所は市場の建物の中。最上階から廊下や階段を降りて向かうが、いつものことながら複雑な作りで迷ってしまう。そんな中でも目に入ってくる面白い店や看板。さまざまな魅力が隠されているのも市場らしい。

すでに観光時期の最盛期は過ぎており、平日だったことで落ち着いているかと思ったが、市場の出店などは彩鮮やかだった。ベルタウンや近隣にある高層コンドミニアムから徒歩ですぐの別世界。スペース拡大を図った改装を昨年に終えて空気はまだ新しい。地元住民も加わり魅力的な生活の場を作り上げていることがわかった。

そのまま、ファーストアベニューを下りパイオニア・スクエアを抜けた。工事中の場所も多く、まだ車走行や徒歩でも不便な部分があるかもしれないが、一時に比べれば活気が戻りつつある感じを受けた。これらの地区が久々で新鮮だったこともあるが、特色が以前よりも鮮明になり、お互いに違いを出しているように見える。訪れる人々も目的がはっきりして分かりやすいだろう。

インターナショナル・ディストリクトはどうだろうか。近場にはセーフコ・フィールド、センチュリーリンク・フィールドと2大イベント施設もそろえ、他所からのアクセスも完璧。パイクプレース・マーケット、パイオニア・スクエアに負けないだけの色とポテンシャルはある。アジア色が強く、さまざまな文化が集い、すでに生活色あふれ、中には低所得者も多
い。ホームレスや犯罪対策、また足を運ぶ人々や一般住民のマナーもあるだろう。多岐の課題を抱える中で成果を出せるか。守るべき住民や地元ビジネスを支え、どのように折り合いをつけて発展に目を向けていくのだろうか。

それぞれが日系社会にゆかり深い歴史ある地区。シアトルが誇る名所としてさらなる成功を収めてほしい。

(佐々木志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。