Home コラム 一石 日本文化理解、柔軟に

日本文化理解、柔軟に

今年も暖冬で早い春の訪れとなった。ソメイヨシノに関しては今月上旬に咲き始め、あっという間にピークを迎え、雨嵐とともに散っていった、といえるだろうか。日本では今が開花時期でピークを迎えることになるという。

各所で咲く美しい桜を楽しむ文化は当地でも根付いている。雨の時期を終え、春の訪れを祝う絶好の存在といえる。

一方で咲き始めから、散るまでの短い時期をじっくり楽しむのは、日本ならではのものかもしれない

最近、知人が「7分咲き」、「8分咲き」をどのように英語で表現すれば良いかとの質問を受けたという。「70 %」、「80 %」、「almost」などという表現で良いとは思うが、その細かな部分では気にする必要はないのではということになったが、質問者の結論は「(海外の人間には)日本の文化はやはりわからない」というものだったという。

日本から、また当地で行う日本関連の広報で気を付けなければならない部分かもしれない。相手が知りたいことは何か、知るべきことは何か。こちらからの押し付けだけでは良くないことも多い。

日本文化への理解が深いノースウエストだが、当地社会の一般市民からみれば、日本桜の美しさ、春の祝いは賛同できるが、「7分咲き」、「8分咲き」の意味、深さまで理解するに及ばないだろう。極端に言えば、知る必要がないのかもしれない。

今週末にダウンタウンで開かれる桜コンに集まるファンの大勢は、アニメ、漫画、ゲームなどを通じて日本への接点を持つ可能性のある、「親日予備軍」と呼べる人々だろう。だが、彼らが日本文化を真に広く理解しようとしているか、興味を持っているか、それはわからない。

イーストサイドの秋祭りは、昨年の18 回で区切りが付けられた。祭名も「ジャパンフェア」となり、新たな運営陣でスタートする。第一回目となるミーティングは本原稿の出稿後となるが、日系人口が頭打ちの中で、「自分たちの層」を越えて、新たにファンを取り込む姿勢に注目したい。

寿司が多様な形を取り入れて人気となったように、日本文化も時代に柔軟に合わせ、様々な形でファン層を広げていってほしい。

(佐々木 志峰)

北米報知は、ワシントン州シアトルで英語及び日本語で地元シアトルの時事ニュースや日系コミュニティーの話題を発信する新聞。1902年に創刊した「北米時事 (North American Times)」を前身とし、第二次世界大戦後に強制収容から引き上げた日系アメリカ人によって「北米報知(North American Post)」として再刊された。現存する邦字新聞として北米最古の歴史を誇る。1950年以前の記事は、ワシントン大学と北米報知財団との共同プロジェクトからデジタル化され、デジタル・アーカイブとして閲覧が可能(https://content.lib.washington.edu/nikkeiweb/index.html)。