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防犯意識

 週末に隣の住民から盗難被害を聞かされた。午前2時過ぎで、飼い犬が異様に騒ぐ音に飛び起きたが、犯人たちは慌ただしく逃げ去っていったという。

 盗難にあったのはキャタリティックコンバーターという車の排気ガス浄化装置。同日には近隣の別場所で同様の盗難被害が起きていた。車の形や色で類似しているため、同じグループの犯行と推測できる。

 数カ月前、近隣の郵便受けが一斉に盗難に遭った。鍵付きにしていた筆者の郵便受けもこじ開けられた。「ここまでするのか」と衝撃を受けたが、この住民がその際に心配していたのが、車の部品盗難だった。地元メディアでも頻繁に報じられているが、SUVやトヨタのプリウスを狙ったものが多く、盗んだ部品は100㌦から200㌦といった金額で取引されるという。シアトル市内だけで昨年は514件を超えたとされている。

 キング郡保安官事務所のみに報告された数字をシアトル・タイムズ紙が掲載していたが、犯罪件数の伸びに驚かされる。2019年は11件だったが、2020年1月から3月の期間だけで11件。同年10月から12月は174件に及び、一年で285件にまで達したという。今年も増加傾向にある。

 新型コロナウイルスのパンデミックで、マスクを着けることが好都合になるのだろう。真偽のほどは定かでないが、通行人がいる街中で車の修理を装い、白昼堂々と犯罪行為に及ぶ映像がオンライン上にあった。盗難の時間は数分ほどだった。

 近隣では同様の被害が続けて発生しているという。話をつなぎ合わせていくと、片隅にあった記憶が蘇ってくる。仕事を終えて深夜過ぎの帰宅になった一週間前。不審者が自宅近くの道路を逃げるように横切っていくのが目に入った。違和感を覚えて駐車後に周辺に目を凝らしたが、意識が低かったのか、その時は何も目に入らなかった。

 一週間後の同じ時間帯。近所で被害に遭った車はトヨタ・プリウス。正直、狙われていたのだろう。防犯意識を高く、再度気を引き締めたい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。