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シアトル市が低所得者向け住居支援に400万ドル拠出 CARES法1400万予算から

シアトル市のジェニー・ダーカン市長は5月11日、CARES法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act.)によって米国連邦政府から受ける1400万円の補助金のうち、400万ドルを低所得者層などへの住居支援に拠出することを発表した。ダーカン市長は先月24日に、連邦政府がコロナ禍の経済救済として3月27日に発令したCARES法によって、コミュニティ開発包括補助金(CDBG)、ホームレス支援のための緊急助成金(ESG)、エイズ感染者のための住居支援(HOPWA)など既存の連邦政府プログラムを通して約1400万ドルの補助金がシアトル市へ給付されることを発表し、その予算配分の早急な策定と承認を市議会へ求めていた。400万ドルの住居支援予算は11日にシアトル市議会で承認され、市長のプレスリリースで同予算の振り分けが発表された。

同予算は、主に、援助を必要とする市民らを日頃から支援している非営利団体へ振り分けられていく。例えば、70万ドルは非営利団体ユナイテッド・ウェイのキング郡支部が展開するホームレス対策プログラムのユナイテッド・ウェイ・ホーム・ベイスへ配分される。また、140万ドルは市の住宅課(Seattle Office of Housing)を介してアフォーダブル・ハウジングと呼ばれる低所得者向け住宅を提供している非営利団体へ割り振られる。

ユナイテッド・ウェイ・キング郡支部は、4月のタイミングでシアトル市から100万ドルの予算を受けて、家賃補助プログラムを開始。同プログラムの受付開始から48時間で7000件近い申請があった。また、そのうち7割は非白人のマイノリティー層だった。4月の予算では2000世帯の救済しかできなかったため、今回の70万ドルで家賃補助プログラムを再開する。「市民が住む家を追われることのないように家賃補助を実施することは、コロナウイルス対策の中でも最も重要な柱」と、ユナイテッド・ウェイのキング郡支部理事長兼CEOのゴードン・マクヘンリー・ジュニア氏は述べる。

日系アメリカ人もその創設に関わり、インターナショナル・ディストリクトで難民や移民コミュニティへ48年間にわたって住宅支援などを続けているInterim CDAは、シアトル市の住宅課から予算を受ける非営利団体の一つ。同団体エグゼクティブ・ディレクターのプラディープタ・ウパデアーエ氏は、「難民や移民の多くが職を失いました。移民には高齢者や低所得者など社会的弱者が多く、ほとんどが英語を話せないため、複雑な援助システムを利用するのが難しい状態」と、移民コミュニティーへの支援の重要さを強調する。

CARES法でシアトル市が連邦政府から受ける1400ドルのうち、住居支援の400ドルを含めて、これまでに1270ドルの予算配分がシアトル市議会で可決されている。住居支援以外では、高齢者やホームレスへの食糧配給に700万ドルが発表されているほか、3月25日に締め切られていた零細企業へ最大1万ドルを補助する基金(Small Business Stabilization Fund)への150万ドルの追加なども見込まれている。

シュレーゲル 京 希伊子
フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書などを経て、国連大学の持続可能な社会の構築をめざす産官学イニシアティブに従事。2014年からシアトルへ戻り、日本語イマージョン小学校に通う一人娘を育てながら、 ITから文芸まで幅広い分野の翻訳をてがける。主な訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』トム・ホイールライト著(筑摩書房)など。ワシントン州の他に、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダなどに居住し、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、料理、読書。