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マイノリティー躍進

 2021年のシアトル市長選挙でブルース・ハレル氏が当選した。キング郡によると、開票54%弱となった8日で得票率は約59%。世論調査で優勢が伝えられていた通りの結果となった。対立候補のロレーナ・ゴンザレス氏も含め、シアトル市として初のマイノリティー市長誕生は決まっていた。ハレル氏は同市初のアジア系市長となる。

 市議選挙に初出馬した2007年以来、本紙として日系政治家のハレル氏を取り上げる機会も多かった。当地出身で3期務めた市議時代は議会議長や暫定市長も務めた。日本外務省が主催する日系人リーダー訪日プログラムにも参加している。

 公約事項にはホームレス問題の解決や、警察官の雇用増を通じて近隣環境や治安の改善を図ることなどが挙げられる。急速に成長を続けるシアトルの舵取りの難しさは、市政経験が豊富だけに十分に熟知しているだろう。

 憎悪犯罪の対策にも期待したい。日系二世の母親は第二次世界大戦時の日系人強制退去を経験。シアトル・タイムズ紙の記事の中では地元日系作家ローレンス・マツダ氏の意見が掲載されていたが、人種、コミュニティーに対する差別、偏見を改めて見つめ直す転換期となるだろうか。

 マイノリティーの躍進として、シアトル港湾局委員会の第4議席でトシコ・グレース・ハセガワ氏の当選が伝えられた。父親はワシントン州上院議会で活躍を続けるボブ・ハセガワ氏。マイノリティー女性が初めて加わることになるという。

 シアトル港湾局は海と空の「2つの港」を運営する。アジア諸国への窓口的な存在で、関連雇用数は20万以上という。地元メディアによると、企業雇用数で州内最大はアマゾン社が8万でボーイング社を昨年上回った。こうした巨大企業とも関わる港湾局は、経済面で圧倒的な影響力を誇る。

 ハセガワ氏は2018年からアジア太平洋系米国人コミュニティーの担当としてジェイ・インスリー州知事の政権に尽力。まだ33歳と若く、日系社会を含めて新たなリーダーとして活躍を期待したい。

(佐々木 志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。