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誠に失礼だが、普段あまり歩くところを見たことがない近所住人が、犬の散歩をしている。そのあとには自転車、やがてキックボードを駆り家を出ては戻ってくる。きょうだいで笑顔で家前の道路でスマートフォンを構えている。

大ヒットとなっているモバイルゲーム「ポケモンGO」。メディアの扱いも連日大きく、良し悪し様々な話題を提供している。

ゲームの年齢対象は10歳以上とある。メディアの記事などを見ると20歳代を中心とした若者をはじめ、「ポケモン世代」から圧倒的な人気が集まっているようだ。あまりのダウンロードと利用者の多さ、また利用時間の長さから、関連ビジネスへの波及効果についても考察が始められている。夏休みということもあり、「ポケモン探し」で外出を積極的にする機会としても利用されるだろうか。

一方で、まずは何事も安全第一。また近隣、地元ビジネスへの配慮を忘れずに行動を心掛けてほしい。記念墓地や特定の博物館が施設内での使用を禁止したことは最たる例となる。

ポケモンが米国に登場したのは90年代後半。以来、商品は店内に並び続け、根強い人気を誇っているが、また新たな「ポケモンブーム」が到来したようだ。押し上げているのが、幼少時をポケモンで過ごした若い世代。本紙で4、5年前に活躍した英語面記者の1人は、ポケモンの大ファンで子供のころに関連グッズを多く集めたと話していた。当時のポケモンという日本からの「黒船」の存在と勢いは、確かに本物だったのだろう。

筆者が以前インタビューしたある研究者は、現在のアニメ人気のきっかけとして、ポケモンの存在を挙げていた。いわゆる一部特定のファンではなく、一般家庭、子供たちに広くファン層を開拓したポケモンの存在が、「アニメ」全体への興味へ広がっていったという。

地元では歴史的建造物や史跡、公園、記念碑などがゲーム内における「訪問地」として指定されている。実際にインターナショナル・ディストリクトにもそうした場所が多いようだ。シアトルにおいて知られざる場所、新たな知識を深める機会として、こうしたゲームを利用する手もあるだろうか。

「日本」が生んだポケモンの底力を改めて感じる機会となっている。

(佐々木志峰)

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。