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日系アスリートの活躍 〜 一石

By 佐々木 志峰

知人から、何の拍子もなく携帯にメッセージが入った。「信じられない。とてつもない、すご過ぎる」――。何についてかは、聞くまでもなかった。こちらの返答も短く、「本当、なんてドラマだ」

3月に行われた野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、激戦を勝ち抜いた日本が3度目の優勝を果たした。最後までストーリーを練り上げたかのような展開。翌日の仕事現場でもその話題が出て、同業者から「おめでとう」と声を掛けられた。

大リーグの2023年シーズンが開幕し、早速シアトルにもやってきたロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手。WBCで日本代表「侍ジャパン」の中心として投打で躍動し、最優秀選手賞を獲得。表彰式では一番最後に金メダルを受け、真ん中に立った壇上で優勝トロフィーを誇らしげに掲げた。日本で行われた大会初戦の先発から、最後の締めくくりまで――。プレッシャーの中での活躍ぶりは見事というほかなかった。

「大谷」以外でも話題は多々あった。母親が日本出身で日系のラーズ・ヌートバー選手は侍ジャパン入りしてから大きな注目を集めた。日本でも大ブレークを果たし、間違いなくチームの躍進に貢献したひとりだった。

北米スポーツで活躍する日系選手は野球以外にもいる。男子ゴルフでも日系選手が台頭しており、カート・キタヤマ選手もそのひとり。3月初旬の大会でPGAツアー初優勝を果たし、世界ランキングでは松山英樹選手と肩を並べる。父親は米国出身で母親は和歌山県生まれ。日本語は話さないというが、自身のルーツを誇り高く抱いている。

日系選手らしく、身長は170センチとほかの選手に比べると小柄。それでも分厚い体からパワフルな打球を放つ。今年30歳を迎えたが、今いるトップの舞台に辿り着くまで、日本などのアジア諸国や、欧州など世界中を回ってプレー。さまざまな環境で培ってきた経験を生かし、メンタル面でも強さが際立つ。

日本ゆかりのアスリートの活躍。日本と日系社会をつなぐ存在としても心強い。引き続き、存在感を示し続けてほしい。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。