Home コラム 一石 親善活動の大切さ〜一石

親善活動の大切さ〜一石

By 佐々木 志峰

前回山火事について書いたところで、再びその影響を実際に体験した。ミシガン州。解決を見ない、すぐ隣のカナダから流れる災害の煙が空を覆う。鼻につく煙の臭い。大気状態は「不健康」とされる数値に達し、警報発令が続いた。屋外の仕事が半日あまり続いた後、疲れた体を引きずって宿泊先に戻ると喉に違和感を覚えた。

ミシガン州といえば中心都市デトロイト。財政破綻から、再生への道のりの最中にある。それも今月で10年目を迎えるが、ダウンタウンから近くの地域には依然として荒廃した場所も多い。郊外に立つ米中西部らしい閑静な住宅地との間にあるギャップはあまりに大きいように思える。

華やかな行事の開催地から近く。行き帰りの車中で、ふと通りの標識に自動車のブランド名が見えた。通りから目に入った荒地の雰囲気。日米の貿易摩擦やジャパンバッシング。その最中に起きたビンセント・チン殺人事件。アジア系米国人が訴えたヘイトクライム(憎悪犯罪)の社会問題へとイメージが一気に広がる。歴史の爪痕を見るようで、心がずしりと重くなる。

当時を覚えている人々もまだ地元に多いだろう。世代を経ても癒えないものがあるかもしれない。 そうした時こそ、相互理解を深める親善の活動が必要となる。人種差別の問題は続いているが、それでも米国各地を不自由なく飛び回れる自分がいる。先人から世代を重ね、そして現在も続く根強い活動の恩恵をこの身に受けていると実感できる。

在シアトル日本国総領事館によると、今年の春の叙勲で当地日系社会にかかわりを持ってきた3人が勲章を受けた。デール・カクさん、末次毅行さんに旭日双光章、姉妹紙ソイソースでの連載記事でも馴染みの武田彰さんへ瑞宝双光章。また昨年秋の叙勲で旭日単光章を受章したツチノ・フォレスターさんへの伝達式も最近行われたとある。

この受章者全員の活動、活躍ぶりは自らの目で見てきた。編集部時代がなつかしく思い起こされる。新しい世代の波、そして変化もあるだうが、親善の思いはこれからも変わらないだろう。7月。米国が建国して、247年が経つ。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。