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プログレッシブ・シアトル

先週、シアトル市長選で大きな動きがあった。約30年前の性的スキャンダルの対応に追われるエド・マレー市長が再選キャンペーンの中止を発表した。同日、ボブ・ハセガワ州上院議員が立候補。現在シアトル市議会の議長を務めるブルース・ハレル市議が出馬した前回に続く日系政治家の挑戦となる。
ハセガワ州上議は2004年の州下院議員選で初当選。2012年に州上院に鞍替えした。労働組合「チームスター」の地元幹部の経験を生かし、「団結」を政治理念の第一とする。日系人としてのアイデンティティー、家族の経験を軸に、現在シアトル市政府が進める移民擁護、進歩的政策にも応えていくという。
一般市民が幅広く利益を享受できる税制構築に力を入れており、州政治の場では大手一般銀行による税金運用に異を唱え、州公立の銀行設立を目指していた。シアトル市政でも同様の姿勢を打ち出すという。ダウンタウンのウェルズファーゴセンター前での決意表明もその狙いがあったという。
日系政治家は主に民主党議員だが、政策や立場はそれぞれ異なる。だがある程度規模を抱えるシアトル日系社会とはいえ、ハワイのように日系人口を多く抱えるような地域ではない。マイノリティーのリーダー格として、日系政治家のプレゼンスは高まっている。
過去、現在の市長選では、ハレル市議長に加え、プライベートまで踏み込むと、前市長で今選挙に立候補したマイク・マギン候補のペギー・リンチ夫人、マレー現市長の夫はマイケル・シオサキ氏と、最近のファーストレディー、ファーストジェントルマンは日系人。前市長選の本選前には、本紙でも両氏を取り上げた。
こうした当地日系社会の動き、性質は宇和島屋のデニース・モリグチCEOの話からもうかがえた。地元創業の宇和島屋は、歴代社長4人中、2人が女性となる。モリグチCEOは、親戚に女性が占める割合が多く、自然と「進歩的」な環境が出来上がった語る。だが、宇和島屋のみならず、シアトルには進歩的な土壌があり、日系社会、政界にも確かな根付きを実感できるのではないか。
(佐々木 志峰)
オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。