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第63回 希望の商い

ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)を全国に展開する事業が、日本の経済産業省の認定を受けている。その事業名は「ワクワク系新プログラムによる、サービス業の生産性向上、企業力底上げ〝希望の商い〟全国展開事業」。この「希望の商い」という言葉は、実は、ワクワク系マーケティング実践会の会員企業からいただいたものだ。それはあるクリーニング店なのだが、同店の店主が、ご自身の「あの頃」を振り返ってレポートをくださった。

長らく当会と共に歩んでくれている店主で、実践が進み成果も出て、新たな店の姿が見えてきた彼は、あるときゼロから新しい店を作ることを決断した。そのために、大きく資金も借り入れ、プランを練りに練ってついにオープンの日を迎えた。ところが、その日は2011年3月15日。そう、東日本大震災の4日後だった。関東にある同店も、もちろんその影響は免れず、彼の言葉にはこうある。「一生で一番の記念すべき日なのに、ガソリンがなくなり、計画停電があり、世の中全体が自粛ムードになったので売上はガタ落ちでした。そして、気がつけば大きな赤字を出してしまいました。その影響は3年間続きました。この頃は、僕にとって人生で最も辛かった時だと思います」

「ただ、確かに売上が減り、資金繰りが苦しかったのですが、不思議と不安がなかったのです。ワクワク系さえ続けていればいつかは回復する、そう思えたのです。ワクワク系の考え方で商いをやっていると、お客さんが喜んでくれるのです。その顔を見るたびに、この人たちはこの店を潰さないだろうと感じたのです」

念のため言うが、ここでの「ワクワク系さえ続けていれば」は、彼がワクワク系を妄信していたという意味ではない。彼自身がそれまでの実践を通じて得ている結果と手ごたえ、実際の顧客のリアルな姿と数が、この思いとなったのだ。

そしてレポートはこう続く。「それが僕にとって希望だったのです。その希望が、僕を支えたのです。だから、僕はワクワク系を希望の商いと呼んでいるのです」

商売や仕事をしていると、自分にはどうにもならないことが起こることもある。今日の新型コロナ禍も然り。しかし、あの頃を振り返って今また彼は言う。「どんなに現状が厳しくても「希望」があり「仲間」がいることは最強です」

ワクワク系を、全国の仲間と共に実践し、あなたのような方々と分かち合い続けて、20年余。我々は、何があろうとも歩み続ける。希望の商いを語り続ける。世の中がどんなに変化していこうとも、その先にまた世界は待っているのだから。

山口大学人文学部卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年オラクルひと・しくみ研究所を設立。「人の心と行動の科学」を基にした独自のビジネス理論を研究・開発し、2000年からは、その実践企業の会を主宰。現在、全都道府県および北米から千数百社が集う。