インターナショナル・ディストリクトや
日本町を新1世にとって魅力的な場所にしたい
日系アメリカ人と在米日本人の架け橋に
これまで、シアトルの日系人コミュニティーに深くかかわってきたモリグチ。新1世と呼ばれる、日本から新しく米国へ移住してきた人々と、日系アメリカ人コミュニティーをもっとつなげる方法を模索したいとも話す。現在のところ、日系アメリカ人と新1世のつながりは非常に限られている。「新1世の方はインターナショナル・ディストリクトで宇和島屋以外の場所を歩いて回るのに、ちょっと抵抗があるのではないでしょうか」。パブリックスのように、富士松ビレッジに新しい小売店を増やすことで、インターナショナル・ディストリクトや日本町を新1世にとって魅力的な場所にしたいと訴える。
モリグチは、本誌の姉妹紙である『北米報知』の発行人としての立場を歴代の日系人リーダーから1988年に引き継いで以来、その出版運営を支えてきた。「1902年に歴史をさかのぼる北米報知は、コミュニティーにとって重要な新聞です。シアトル地域における日系の歴史を記録していくという意味でも歴史的価値は多大。これからも長く続けていくためには、若い読者を引き付ける必要があります」。北米報知とソイソースの記事を日英翻訳で連動させて、新1世の日本人と日系アメリカ人のコミュニティーをつなぐようなコンテンツ制作にも力を入れている。そんな中、モリグチが期待を持てると感じていることがある。それは、若い世代の日系人の間で、日本への関心が高まっていることだ。
「孫たちは日本が大好き。日本語のクラスも取っています。9歳の孫は三味線まで習っていて、日本文化に対する意識が高い」。新1世に、日系アメリカ人の歴史を伝える取り組みも始まっている。「2世や3世の日系アメリカ人にとって、新1世の人たちについて知ることは難しいところがありました。新1世の日本人にとっても、日系アメリカ人は身近な存在ではないかもしれません。隔たりはこれからもあるでしょう。ソイソースと北米報知がその解消の役に立てればいい。シアトルは、その規模からか他都市より新1世と日系人の関係が良いと思うので」。ソイソースと北米報知の相互協力によってコミュニティーの距離が縮まれば、厳しい新聞業界での生き残りへの道を切り開くことができるかもしれないという考えだ。
今年84歳、子年生まれの年男である。モリグチ一家は、いつも変わりゆく時代に適応してきた。現代のシアトルで確かなことがひとつあるとすれば、それは大きな変革の中にあるということ。モリグチはこの波に乗って、愛するこの地域をもっと豊かにしたいと願っている。
モリグチが経営する不動産会社、フジマツ・コーポレーションとダ・リ・ディベロップメントUSA(台湾のダ・リ・ディベロップメントの関連会社)が提携を結び、アパートとホテルが入った高さ270フィートの複合ビルを5th Ave. S.とS. Jackson St.の交差点北東の角に建設する。このビルは、宇和島屋を1928年に創業した森口富士松さんの名前から富士松ビレッジと呼ばれる。低層階には4万平方フィートの小売・商業スペース、その上は12階まで出張者向けの200室ある3.5~4つ星のホテル、さらに上の階にはアパートが入る計画で、24〜29階建てになる予定。
Concept Image by MG2