Home インタビュー オレゴンからの声 コミュニ...

オレゴンからの声 コミュニティー代表者に聞く

ノースウエストの一角として、ワシントン州に隣接するオレゴン州。ポートランドは当地と並ぶノースウエストの中心都市で、近年は日本からの注目も高まっているという。オレゴン州は林業やコンピューター関連で日本とビジネス関係を築き、日本文化の浸透度、理解度も高いといわれている。3年弱にわたり任期を務めてきた在ポートランド日本領事事務所の古澤洋志前総領事(取材当時総領事、3月離任)に話を聞いてみた。

領事事務所となって久しいですが、管轄区における業務内容に変化はありますでしょうか。

事務所にかんしては、スタッフ、オフィススペースが半減、総領事公邸もカットとなりましたが、オレゴン州を見てみますと、3年前から企業数、邦人数を比べると増えています。

2015年10月で企業数は135になりました。これは2012年時から38プラスです。オレゴン州民の雇用者数は7585人ということで2638人増えています。邦人数もそれに合わせて増えています。

経済活動も日本とオレゴンの間で盛んで、文化活動や学生数も比例して増えています。

日本からオレゴン州の注目が高いと聞きます。こうした要因はどこにあるとお考えでしょうか。

ひとつはオレゴン州政府やオレゴン日米協会などが集まり、日本で毎年、「Doing Business in Oregon」と称して企業セミナーを行っています。今年は6月にJETROや日刊工業新聞、米国大使館などと共催して日本で中小企業を中心に誘致活動をします。こうした活動が徐々に浸透しています。

日本では昨今、ノシアトルを含めて、ノースウエストの環境、治安など住みやすい好条件が見直されているところだと思います。労働の質もあるかと思います。

ポートランドは日本のメディアで取り上げられ、注目度の高い街になっており、環境都市、コンパクトシティーといった名前で呼ばれ、注目を集めています。日本の都市計画課や建築家、大手の不動産会社が、ポートランドから学ぶことはないか、訪れているようです。

日本文化の理解も深く、特に人口当たりの日本語学習者数が高いと聞きます。

日本語学習者数の比率はハワイに次いで全米で2番目です。一般の米国市民が日本語を勉強している部分では、普段街を歩いていて日本語を理解する市民によく出会うというのがこの州の特徴で、日本語が浸透しているのだと実感します。

州内では小、中、高、大の48教育機関が日本語を教えているわけですが、任期の間に各学校に足を運んで総領事表彰を学長に渡しました。

これは私の1つの仕事の柱としてやらせていただきました。日本語のクラスが私立学校をはじめ各地で消滅していると聞きますが、今も維持して教えてくれている学校を配慮することは、日米関係の上でも良いことだと思っています。

イマージョン学校は小、中、高とあります。先生方の熱意に感銘を受けました。

他州も赴任されておりますが、日系、日本文化などオレゴン州ならではという点はありますか。

今まで赴任先は大都市でしたが、ポートランドは中都市で、シアトルに比べても小さいです。しかし、それなりにまとまりがあり、街を動かす人の顔が見えやすいです。市長、知事、経済界のトップと会う機会があり、時間的な余裕もあり、一対一で会って話す機会も多く、非常に仕事のしやすいところだと思います。

また親日的な土地柄も、生活をすればするほど実感します。市民が多く日本語を学んでいることも要因だと思いますが、過去に優れた政治的指導者がいて、日本企業をオレゴン州に入りやすいように様々な配慮をしてくれました。

そうした先駆者に加え、その前には日系人が重要な役割を果たしました。農業などでは、苦しい時を乗り越えて、一生懸命改良を重ねて良い仕事をしてきたことで認められ、主流社会の人たちに浸透し、日本人に対する意識が変わってきたこともあると思います。

日系人社会との交流はどういったものが印象にありますか。

当地には日系人の団体が3、4ありまして、他の西海岸に比べれば小ぶりな団体ですが、皆さん一生懸命活動されています。米国人ではありますが、ルーツは日本ということで日本政府は見放すことはしません。領事館として、日系人との関係は緊密に維持しています。

東日本大震災から5周年、当地からの被災地への復興支援活動について。

本当にありがたいの一言です。震災後数週間後でボランティアとして現地に入り、それからも毎年、地元の関連団体がチャリティー活動を続けてきていることに感謝で一杯です。

今年は行事の中でドキュメンタリーを流しますが、これはオレゴン州民に地震、津波への意識を高めるためのものです。プロデューサーや地震、地質学の専門家との質疑応答も予定しています(3月17日開催)。

NHKワールドが西海岸で24時間無料放送されます。日本を知ってもらう上で重要なツールになるかもしれません。

我々の仕事の1つに日本のことを英語で伝えるということがあります。なかなか難しく、時間がかかることですが、「日本人は何を考えているかわからない」といった考えを払しょくする上でも、日本のことを媒体を通じて外に出すということは大事だと思います。

米国にしてみれば、お互いを理解し日米関係を進化させるという一つの助けになると思います。

オレゴン州外の管轄としてアイダホ州について印象をお聞かせください。

オレゴンと日本の関係に比べ、アイダホと日本の関係においては若干お粗末だったかもしれません。例えば姉妹都市に関してはオレゴン州は22ありますが、アイダホは2です。企業数はオレゴンに対して、アイダホは5社で、あまりに貧弱かなという気がします。

もう少しアイダホ―日本の関係を緊密にしたいという意識があります。ボイジーには新たに名誉領事のロバート・ヒライさんが去年の4月に就任し、役割を果たしてもらって、活発に動いてもらっています。これからアイダホと日本の関係も期待できるかと思います。

(記事・写真 佐々木 志峰)

編集部より

古澤善総領事への取材は3月に行われたものです。

オレゴン大学でジャーナリズムを学んだ後、2005年に北米報知入社。2010年から2017年にかけて北米報知編集長を務める。現在も北米報知へ「一石」執筆を続ける。